103人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
試合
いよいよ、4週間が終わり、今日が、ギルマンとの試合の日になった。
いつもよりも早めに寝たお陰か、疲れも無く、起きる事が出来た。
いつもなら、隣で寝ていたオームさんは、俺よりも先に起きている。
俺の方を見て、いつもの笑顔で。
「おはようさん。まだ、試合までに時間はある。飯を食いに行こうか。」
「…はい。」
俺に声を掛けて、ベットから下りると、オームさんと共に冒険者ギルドに向かう。
その道中、色んな人から応援の言葉を貰った。
…凄く、有難いと同時に緊張が凄かった。
そんな俺をオームさんは、周りの人からさり気なく守るかのように、後頭部を撫でて、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドでは、師匠、ガイさん、マーサさんが、迎えてくれて。
「ジン!おはようサ!」
「おはよう、ジン君。」
「おはよ!料理の準備は出来てるから、おいで!」
それぞれが、俺に話し掛けてくれる。
俺は、嬉しくて口端をぐっと上げて笑った。
「はい!」
元気よく、返事をしてから席につき、挨拶も交えながらたわいもない話をする。
その間に、マーサさんのスペシャル料理が並んだ。この日の為に用意してくれた焼き魚のソテー、それに、やっと見つけた酢でポテトと茸の卵サラダ、メインは骨付きの魔物の大きなお肉焼き。
もう、止まらない美味しさがそこにある。
夢の骨付き肉は、豪快にかぶりつくと、ぐっと噛みちぎれてジューシーな肉汁と、臭みがない美味しさが広がり。
じっと、もぐもぐ食べる俺の姿に、皆が笑った。
このご飯のお陰で、ほぼ、緊張が無くなり、食べ終わったら、皆で手を合わせて。
「美味しいご飯、頂きました。」
この挨拶が、店に広がり。ちょっとしたブームになってるとマーサさんが教えてくれた。
「ジン、大丈夫だからね?ここの料理も、あんたが、がむしゃにやってきたのを、あの大バカギルマンに、たっぷりぶつけてやんな!」
バシンとマーサさんに、背中を叩かれ気合いを込められた。少々、ヒリヒリするも、俺は、強く頷き返し。
「勿論です!」
握り拳も作って、高らかに宣言した。
さぁ、そろそろ行かないと、立ち上がり、俺と師匠、ガイさん、オームさんと共に、試合を行う広場へと向かった。
広場に向かうと、殺気を放つギルマンの姿も、その周りで固唾を飲んで自分を見つめる集落の人達も見えたんだ。
俺は、立ち止まり、1度、目を瞑った。
『大丈夫…やれる。この4週間で習った事を、存分に相手にぶつけるんだ。』
何度も言い聞かして、俺は、目を開き。
何も動じない決心を決めた表情で、ギルマンと向かい合わせになる場所まで歩いていった。
その中央に、オームさんが、手を挙げ。
「此度!我々の仲間!ギルマンと新参者ジンとの手合わせの試合を行う!試合の決まり事は、回復の魔法は使用しない事!相手を死なせない事!正々堂々と力を出して戦い抜く事!負けの判定は、審判の俺とガイが判断したり、自分が宣言するかの2択になる。2人とも用意はいいか!」
オームさんの言葉に俺とギルマンは頷く。
「では、構え!」
俺は、槍を構え。
ギルマンは、ウォーハンマーを…片手で構え、腰から、鞭を構えたんだ。
とても、歪な笑顔で俺を見つめる。
「……開始!」
オームさんの言葉と共に俺は、全身の強化を纏い、相手から、素早く距離を取るように後ろに下がる。
ギルマンは、その俺の行動に、ぐふふふと笑って。
「何やら、お前、すげー特訓したらしいじゃねぇか。敬意も込めてよぉ…俺も特訓したんだぜぇ?」
そう言うと、鞭を1度鳴らす。
あの鞭の動きは、早く…音も凄い、痛そうだった。
ギルマンは、ウォーハンマーのハンマー部分をベロリと舐めて。
「たっぷり、可愛いがってやっから…覚悟しろよぉ?クソガキ。」
「…ふー…」
俺は、深呼吸をして、不敵に笑ってみせた。
「…その言葉、後悔させてやるからな。」
ギルマンに、静かに返してやると、ギルマンが動き出し俺もまた、彼の距離を保ちながら動き始める。
最初のコメントを投稿しよう!