鞭と怒り

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鞭と怒り

さぁて、この鞭の攻撃を避けるにはどうしたものか。 動き出したは良いが、鞭は、今回の修行に入っていない。 槍で、どこまでいなすか、考えていた時、ギルマンが鞭をしならせて、打ち付けた。 鞭が地面を蹴り跳ねる勢いで自分に向かって襲いかかってきた。 一先ず、槍で切っ先目掛け、弾き飛ばす。 が、別の鞭の場所が俺の右腕めがけて、バチンと当たった。 「いっ!?」 当たったその場所が、あざになり、ギリギリだが皮膚は切れてない。 ギルマンの鞭は、また、元に戻る。 俺を見る目が、本当に厭らしくて、腹が立つ。 ジンジンとするものの、構えは崩さずに俺は、ギルマンを睨みつける。 「良い顔するじゃねぇか…ほらほら!」 今度は、連続で振り回す様に、鞭を動かし始めたのだ。 走りはせずに、歩きながらも、俺に近付く。 ヒュンヒュンヒュンと音がなり響く。 地面を打ち付けながら近付くギルマンの鞭を、俺は、'眼帯強化'、'予測予想の強化'、で、その鞭の機動性をある程度の確信を持って読み始める。 すると、それらしき抜け道が、導く様に光り輝いたんだ。 そこに目掛け、トンっトンっと避け始めたんだ。 これなら、いける! ギルマンの鞭を右へ左へ、時に真ん中で避けて、後一歩の時。 バチィイイイイイン!! 鋭い音が、俺の背中から鳴り響く。 「ジン!!」 師匠の言葉が響く。 言葉にならない鋭い痛みが、背中に走り、俺の布の服が破けたのも分かる。 ギルマンは、その瞬間も、見逃さず、鞭では無い、ウォーハンマーを俺の横っ腹目掛けて思いっきりぶつけてきやがったんだ。 咄嗟に、左腕で庇うように受け止めたものの、俺は、数十メートルも先に吹っ飛ばさられ転がり、うつ伏せで、倒れてしまった。 腹までのダメージは、少々あるものの、左腕がイカれてしまった。 …おかしい。 確かに、避けた筈の鞭が向かう先は自分の背中では無かった、足か、腿に…低い活率で来るのに…あの鞭……あの鞭、何かがある。 背中も痛ければ、腕なんか痛さを通り越して、訳が分からなくなっている。 そんな俺を、…ギルマンは、その場から動かず。 挑発をしたのだ。 「おらおら!倒れてんじゃねぇぞ!早く、決着をつけるだろうが!」 「ちっ、ジン!大丈夫か?これ以上は、やばいぞ!」 オームさんの言葉が聞こえたものの……動かない。 鞭の攻撃をしない。 俺は、ゆっくりと起き上がりながら、'気配察知'を密かに…実行すると…身に覚えのある気配を…1人感じたんだ。 この洞窟の中でも、この広場には、珍しい葉っぱの無い大きな木が生えている、丁度試合をこっそり確認できる位の大きな木が。 そこに、ギルマンの仲間の1人の気配が。 そいつが、何やら、薄い糸を持ち、何かを伺いギルマンの動きをチラチラと見ているのを。 冷たく心が冷えるのを感じる。 この男は何処までも卑怯な男なんだと…俺は、左腕をぷらんとさせながらも立ち上がった。 俺は、そこからギルマンを見た。 「…ぐ。」 「ジン…。」 満身創痍に近いが、それ以上に、俺は、怒りすらも超えている。 だったら、と、俺は、動ける右腕で槍を持ち直し、その場で…魔法を唱えたんだ。 「 アバター!(分身)」 もう1人の俺が、横に出来上がる。 ギョッとしたギルマンの反応を見るや、俺と分身が走り出す。 どうやら、補助のスキルが掛かっているのなら、分身にも掛かるらしい。 焦ったギルマンが、夢中で鞭を振り、その切っ先に、隠れた仲間が何かを施す素振りも、分身から見える。 『かかりやがって。』 分身が、大きく飛び、そして、'貫通力アップ'を施し、裏に隠れている仲間目掛け、投げ付けたのだ。 恐ろしいスピードで、その木に目掛け槍が飛び、やっと、仲間が気付いたときには、盛大な音を立てて、穴が空く。 その腕諸共、貫く形で、ぶっすりと刺さったのだ。 「ぎゃぁあーーーっ!」 その仲間が悲鳴を上げて、バランスを崩し倒れ込むと、周りの皆がどよめき、ザワつく。 その糸が張ってしまって、ギルマンの鞭もその方向に伸びるのを目の当たりにし、ギルマンの手から、鞭が離された。 その瞬間を俺は、待っていたんだ。 お前の懐にしゃがみ込んでいて、相手の両足を目掛け、遠慮もなく、槍を貫いた。 「いっっぎっっ!?」 強化されたその槍の強度は、対した補正もされていない人の足何かを簡単に貫く。 迸る血と相手は壮絶な痛みで、俺を睨みつけて、無理やり片手でウォーハンマーを打ち付けたんだ。 俺は容赦しないで、槍をそのままに手を離して、後ろへ避ける。 空振りをし、後ろに倒れるギルマンに、くるっと宙で前転。 そして、 前に近づく形になるや、そのまんま勢いに乗せて、顔面にかかと落としをした。 ドゴンッ!! 相手の顔が、軽くへこみ、そのまんま、勢い良く仰向けに打ち付けられたギルマンから、ウォーハンマーが離れ、落ちる。 ギルマンは、動かない。 暫しの沈黙が流れるも、俺の分身が消えて、俺自身も、ぶっ倒れて。 …そこから、遠くから何かが聞こえるも、もう、俺には分からなかった。 分からない。 酷い眠気に荒がる事も無く、俺は、意識を失った。
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