一人前になる為に

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一人前になる為に

すっかり、次の日まで眠っていた。ぱっちりと目が覚めると、身体を起こす。すると、ギウサが部屋に入ってきて。 「おはよう!ジン!朝ご飯出来てるサ。」 声を掛けてくれたらしい。元気の良いギウサに俺は小さく笑ってベットから下りる。 「おはよう、ギウサ君。有難う。」 礼を告げて、下に下りると、本日の朝ご飯は、ホワイトシチューにふかふかの白いパンだ。 それに変わった茸の盛り合わせに、今日も蜂蜜ジュース。お腹も鳴って、2人で笑いながら席に座って食事をした。 ホワイトシチューは、自分が暮らしていた世界の味と余り変わりなく、パンは、相変わらず、美味しい。 そして、どうやら、茸の盛り合わせは野菜サラダの様だ。とても、さっぱりしていて、食べやすい。 もりもりと食べて、残すは蜂蜜ジュースの時、ギウサから、とある提案を受ける。 「ジン、君は、人族で、齢10歳サ。その年齢は、人族では、まだまだ、勉学、戦術学、魔術学、何もかもがまだまだなのサ。ので!このボクが、5年間、全てを教えるサ、人族で教える術を、人族だけでは教えられない術を君にサ。」 「お、おおぉ!」 「ので、初めの1年間は、この世界の常識、人族のルール、勉学と採取を中心に教えるサ、2年目は、生きる為の武術、3年目以降は、人族以外の交流と学びの日々になるサ…全てが終わった時、君を人族の街まで案内するサ。」 ここでの生活の目標が、はっきりと言われる。5年間、みっちりと基礎とこの世界の事を教えてくれる。 そして、5年後には自分の種族の街まで案内してくれると言うのだ。 未だに、何の種族か分からないギウサの言葉だが、未知数の世界の教師としては充分だと思う。 俺は、しっかりと頷き。 「宜しくお願いします!」 「うむ!したら、ボクの事は、ギウサ師匠とよんでくれると有難いサ。宜しく、ジン。」 「はい!ギウサ師匠!」 「うむ!うむむ!では、お勉強するサ。」 そう言うと、一先ず、ご馳走様をして、食器の洗い方を教えて貰い、茸の家でマンツーマン指導の元に勉学が始まる。 この世界には、人族、獣人、エルフ、ドワーフ、ドラゴン、魔人に分かれている。 そして、それぞれの種族事に土地の分配もされており、1番強い種族はドラゴン、次に魔人であり、その次は、獣人とドワーフが力の際は変わらず、その後にエルフと人族がほぼ同じらしい。 ので、それぞれの国が、最下位に近い人族とエルフを護る意味合いも込めて、散り散りに暮らし溶け込んでいる。 そして、この世界では魔物がおり、それが俺の想像を超えた強さを誇るらしく、その為に、それぞれの国で護られた人族やエルフは、きちんとした力を持っているらしい。 聞いているだけで、頭がパンクしそうになる。 因みに、人族だけ、エルフ族だけ、での集落は無いらしい。必ず、何処かの国と過ごさないと、その日生きられない環境らしい。 その話を聞いた俺は、震え声で。 「そそそ、そんなに、この世界の魔物って、強い生き物なの?」 問いかける。ギウサ、糸みたいな目が、若干、開きそうになるぐらいに、1度、震えてから、俺の顔をじっと見つめ返し。 何も言わず、頷く。 俺の全細胞が理解した瞬間でもあった。 「まぁ、ボクの住んでいるこの近辺なら、まだ、魔物はそこまで強いのは、出ないので…ジンは、とても良い運を持っていると思われるサ。」 俺の頭を優しく撫でてくれて、再び、勉強が始まる。 この世界での通貨は、ペインと呼ばれるだけで、1ペイン=100円。そこまで、難しくなかった。 物流に関しては、圧倒的に、ギルドと呼ばれる請け負い屋が多く、次に農業と畜産、それに数少ないのが水産らしい。 ギウサは、本当に教え方が上手くて、昼休憩を取った後も、夕方までみっちり教えてくれた。 その日の夜。 ギウサは、俺に色んなポージングをして欲しいと言われて、ギウサがお手本に、ビシッと何かのポージングをしたら、それを出来る限り真似する事をしたんだが。 「はい!構えのポージング!」 「はいよ!」 最初は、簡単なポージングだったのが、徐々に難しくなり、息も上がる、身体がプルプルする、俺の身体は…と言った感じで、途中で。 「無、無理だ!」 ねをあげた。すると、ギウサは、腕を組み、何かを考えている風だった。俺は、大の字で寝ている。 「ふむふむ…よし!勉強の後は、ちょっと、身体を柔らかくする体操するサ。」 「や、柔らかく?」 「そ、ジンの身体は、普通の人族よりも柔らかいんだけども、この辺の魔物の攻撃が受け流しが出来るほどの柔らかな筋肉になって無いサ。それを出来るようにこれから、それも併用して教えるサ。少し、休んだら、外に行くサ。」 何とも、スパルタなギウサだが、これも生き残る為と思い、少し息が整ったら大の字から身体を起こす。 軽く、自分のほっぺたを、パシンっ!勢い良く叩き、気持ちを奮い立たせ立ち上がる。 そこに、にやりと笑ったギウサが。 「あ、服は脱いでサ。」 今、なんと言った。 「ジン。服を全部!脱いでサ!」 ぽかんとしていた俺の顔が、徐々に熱を帯びて…思わず、自分の身体を両腕で隠し。 「な、なんで!!嫌だよ!恥ずかしいわ!」 「へっ?服は…あー…そうか。すまん、サ。効果的に、ジンの身体を柔らかくするには、家の外にある泉の水の中でやるのサ。外で脱ぐより、中の方が楽だと思ったのサ。」 「…た、タオルとかで、前は…隠してぇよ。」 「タオル?…前…あ、布サ、ごめん、ごめん。」 タオルとは言わないが、ギウサは、前が隠れる布を渡してくれた。ので、ギウサには外で待ってて貰い、着ている服を脱ぐ。 脱いだ服はたたみ、昔の名残で胸まで隠そうとする仕草をしてしまった。 いやいや、男。今の自分は男。 ばっと、胸を出せるし、下は…即座に、その布で隠すように巻いた。 自分の裸なのに、物凄く恥ずかしい。 やっとの思いで、扉を開けるとギウサは、待っていてくれた。 それにそっと白いその手を差し出してくれて、俺がその手を重ねると柔らかいその手が握り返してくれて。 「こっちサ。」 優しく先導してくれる。 場所は、家から右に向かった橋と橋の間にある湖、淡い光がその湖の中で光り、余り暗さを感じなかった。
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