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ドワーフに会う。
2年目、一日目の無の月。
今日から、対戦も兼ねた体術を教わる予定なのだが、ギウサ師匠は、どうも悩んでいるらしい。
朝ご飯のハッシュドポテトと茸ソテーに焼きたてパンを食べながら、むにゃむにゃしてる。
「ギウサ師匠、何か、問題あります?」
むにゃむにゃしてるギウサ師匠に問い掛けてみると、1度食べるのを止めて、俺の顔を見る。
「むーん、体術を教えてやりたいんだけどサ、どの武器を使った体術にしようか、迷ってるのサ。去年のジンの動きを見て、槍が1番合ってると思うんだけどサ、ボクの所に、武器が一切無いサ、有り合わせの棍棒だったサ?」
「あ、確かに。ギウサ師匠に教えて貰った鉱石の使い方は分かったんだけども、作ろうとしたら、薬草から作れるポーションしか上手く出来なかった…かな。」
「そ、ボクも専用の武器にしか特価してなくて、武器なら、ドワーフさん達が合ってるんだサ。…ジン。」
ギウサ師匠が、改めて、俺を呼び。
「本来なら、来年、ドワーフさん達に会おうと思ったんだけどサ、物覚えも、成長がとても著しいので、この1年、ドワーフさんの所で体術に武器の全てを習いに泊まり込み修行しないかサ?」
「と、泊まり込み修行…まるっと1年で良いんですか?体術系統は、何か、時間が掛かりそうで…」
「あくまでも、目安があると、君の成長は早いって分かったからサ。ボクも君と泊まり込み修行付き合うから、2人で頑張ろうサ。」
「し、師匠…はい!宜しくお願いします!」
少々、早めだが、ギウサ師匠以外の種族に会える好奇心で、俺の目は輝いていた筈。
俺の返事に、ギウサ師匠も大きく頷き。
「じゃぁ、ご飯食べて、ジンは、軽くドワーフ語の復習とポーションや荷物を纏めて欲しいサ。ドワーフさん達は、卵やメェメェのお乳のミルク、お肉の取り引きが盛んでもあるのサ、物々交換する準備もお願いするサ。」
「た、卵!師匠のスープの素の原液が有るんですね!これは、新しい料理が出来ますよ。了解です。」
そう、ギウサ師匠の特製ホワイトシチューなんだが、原液ではなく、小さな固形物で、俺には少々取り扱いが難しかった。
加工してあるらしく、この1年、ミルクと卵、お肉を食べてなかったのだ。
それらが無くても、茸や果実のお陰で飽きずに1年は過ごせたものの、これらは欲しかった。
したら、ギウサ師匠と朝ご飯を食べ終えて。
「じゃぁ、‘美味しいご飯、頂きました’」
2人で、そう言い終えるとギウサ師匠は、ドワーフの知り合いの元に話をしてくると出掛けていった。
俺は、2時間、言語とドワーフの資料を復唱してから、荷物を纏め始める。
服は、布は、ギウサ師匠から分けてもらって作ったTシャツと半ズボンを1枚ずつ。糸は木の実から作れるそれを魔法で。
それから、初めて出来た、擦り傷や怪我を治せるポーションを木の実を加工して作った容器に入れて、異空間収納におさめていく。
このポーションはまだ、一種類しか作れないが、結構な数は有る。味は…無かったけども。
それから、自分の作ったハッシュドポテトをパンで挟んだのとか、茸、果実を葉っぱに丁寧にたたんで木の実の糸で結んでそれらも入れていく。
どうやら、俺の異空間収納は、鮮度も保ち腐らせないのだ。
丁度、空っぽになった倉庫を綺麗にして、水も一応、何本か準備してそれも入れた。
最後に確認してから、倉庫から出ると、足音が聞こえる。
その方向に小走りで近付くと、師匠と隣には小柄だが、全身を鎧と兜で身にまとい背中には大きな盾と武器らしきものが見える…噂のドワーフさん?
それに、もう1人、その二人の後ろにギウサさんより少し、背の高い、鎧をみにまとまった俺と同じ…人族?の人が此方にやって来ていた。
ギウサ師匠が、手を振り、俺は手を振り返しながら、その場で待たず、3人に小走りで近付く。
丁度、橋の手前で、合流出来た。
ギウサ師匠が、俺の方に寄り、人族の人とドワーフさんが2人横並びなる。
どちらの人も見る限り、戦闘出来るオーラ、それに鎧もゴツゴツとしていて、ドワーフさんの筋肉のつき方がもりもり、人族さんも、兜はしてないが俺よりも太い腕、発達した胸板、カッコ良い茶色の髭がもみあげから顔のラインにそって生えている。
少しモジャっとした髪の毛はセミロング…だろう。盾と…何かの武器だ。
思わず、2人をまじまじと見ていたら、ギウサ師匠が。
「ジン、此方の方は、小柄の方がドワーフの長、ゾーマンさんサ。」
「君が…ジンか。1年と長い付き合いになるが、宜しく頼む。」
「はっはい、宜しくお願いします!ジンです!」
ドワーフのゾーマンさんが、その手を差し伸べてくれて、俺はその手をしっかり両手で握り返し、軽い自己紹介を終えた。
「そして、此方の方は、ドワーフと共に生きる人族のリーダー、オームさんサ。」
「おうおう!オームだ!なんだー、お前さん、ちっちゃくて可愛いやっこだ。」
ずいっと俺に近づき、握手じゃなくて、頭をわしゃわしゃを撫でる。
大きいその手は、乱暴に撫でるので身体がぐらんぐらんになりそうだった。
その様子をみたオームさんは、何故か、にかっと笑い、更に撫で続けるんだ。
「や、やめ、やめてくれー。頭がごちゃごちゃになっちゃうよっ。」
「こら!オーム!ジンが挨拶出来んし、ふらふらになるサ!」
「あー、挨拶しただろう?ジンの頭は撫でやす…」
俺は、両手で必死に、力を込めてオームさんの手を掴んで、ぐぐっと少し頭から離す事が出来た。
そんで、俺よりもでかいオームさんに、口をひきつりながら。
「オームさん、こ、れから、宜しく、お願いしますね?後、子供、扱いしてると、罰、あたります、よ!」
えいっと、俺は更にオームさんの手を力を押さえた状態で更に離す。
も、オームさんは、何故か、もう片方の腕で俺を身体を易々とすくいあげて、顔を寄せてきた。
鋭い眼光、眉毛も太いのが分かる。
俺が驚いているにも関わらず、オームさんは笑いながら。
「へぇ、ジン、中々やるじゃねぇか、気に入ったぞぉ。1年間、お前の全てを見てやるからな、かーはっはっはっ。」
そんな事を言って、俺を大きな両手でぐんっと持ち上げて、ギウサ師匠とゾーマンさんから離れるように歩き始める。
「これは…困ったサ。連れてこなきゃ良かったサ。」
ギウサ師匠の嘆きが聞こえてくる。
「しかし、オームのあの手を持ち上げる力は…才能があるんでは無いか?…余りに酷かったら、我がどうにかするぞ。」
ゾーマンさんが、嘆くギウサ師匠に話しかけながら、歩き始めた。
「オームさん!下ろしてくれ!頼むから!」
「まぁまぁ、俺に任せろ。悪い様にしねぇから。」
「あー!嫌だ!下ろせって!」
オームの肩に担がれて、少々、混乱しながら、わーわー喚く俺。
それを笑いながら、ビクともしないオーム。
それを見て、ギウサ師匠は少々黒いオーラを出すも、ゾーマンさんがそれを宥めながら、俺らは、ドワーフの集落へ向かう。
前途多難な道中の予感も、感じる俺であった。
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