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溜め息と一緒に吐き出されたのは、日々の暗がりに巣食う憂鬱と退屈。
少しだけ軽くなった身体で歩く帰り道は、いつもと同じ諦感が並んでいる。
別に特別な事はない。
ごくありふれた日常を送る、何処にでも居るような人間の瞬き。
特別な非日常に憧れ、自分だけの何かを期待した。
そんな事も忘れて、ただ、濁流に流されるままの生活。
人並みに努力をして、人並みに悩んだけれど、それが何かを変えた事はないだろう。
平坦に生きるだけの人生だろうが、語れる程の経験も人並だ。
自らを主張する事は簡単だが、その後の自分を保証することは出来ない。
だから今日も、昨日と同じ道を歩いている 。
あの人はこうだから、今はこれが人気だから、皆がやっているから、誰かがやれと言ったから。
考えることを放棄すれば、とても楽になれるから。
自分で決めたのならば、自分が責任を背負わなければいけない。それはとても難しい事で、あまりの重さに押し潰されてしまうかもしれない。ましてや、他人の分まで背負うなんて有り得ない。
自分さえ良ければと言いながら、他人の気を配る毎日に嫌気が差すが、だからと言って行動を起こす気力はない。
譲り合い、協力し合い、笑い合う。
それこそが幸せだと信じて、ただ日々を無為に過ごす。
同調圧力に屈する事は、負けを認める事だと言っていたあの人はもういない。
数は正義だから。
皆が言うことは正しいことだから。
多数決による決定は、全ての人間の決定だから。
傲慢な正義に胡座をかいて、見下した彼等の心を嘲笑う。
自分の可能性を信じて、少数であることを声高く主張していたあの人はもういない。
他者と違う事は禁忌だから。
その意見を通したとして、上手くいかなかったらどうするのか。
貴方が少し我慢すれば、全て円満に終わるのだから。
全て、上手くいくのだから。
その全てに、貴方は入っていない。
多数派こそが全てであり、尊重すべき意見なのだから。
そこに少数が入り込む余地など無い。
私に抗う気など無いから、どうぞ好きにやっていてと願う。
私を巻き込まないで、他人のままで居させてほしい。
辛いのは嫌い。
苦しいのは嫌い。
悔しいことも嫌い。
悲しいことも嫌い。
痛みなんて、感じなければ良いのに。
苦難から目を背けて、耳を塞いで引き篭る。
温い安寧に身を委ねて揺蕩う私達は、未来を諦めた亡霊みたいだと自嘲する。
寂しい虚しいとはよく聞くけれど、結局何がしたいのか分からない。
けれどまぁ、私にはどうでも良い。
今日も昨日と同じ光景を見て、いつもと同じ人達と生きたのだ。
きっと明日も明後日も、この先ずっと代わり映えのしない日々を生きるのだから。
いらない事を考えるのは止めよう。
考え過ぎると、死にたくなってしまうのだから。
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