2章日常

12/12
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
彩花の隣では食べる気力を失った十六夜が水をがばがば呑んでいた。 「そこまで味覚が違うとは思わなかった。野菜の盛り付けは俺が食べるよ」 ハルは呑気に食虫植物の葉を食べた。 彩花は料理から視線を外して周りを眺めていた。 プライムと看板に書いてある。他にも飲み食い処として三つの店が見えていた。どこも人で一杯なのか店先に仮設の椅子と机が用意されていた。時刻は十三時半だ。彩花が座っている席から高い時計塔が見えている。風が心地よい日だった。 「プライムは俺たちの行き着けなんだよ。 価格も安いし、料理も美味しいんだ」 ハルが楽しそうに付け加えた。 「あの時計塔すごく高いね」 彩花は何気なく訊ねた。 「ロンドンにある時計塔みたいだよな。雰囲気的に」 十六夜も気になっていたようだ。 「ポイントキャッスルだよ。あそこには幽閉されたお姫様が居るんだ」 ハルが液体を飲んだ。水とは明らかに違った黒い色の飲み物だ。彩花たちには牛乳を連想させるような液体が運ばれてきた。 「お姫様?」 「うん、西の魔女に呪いを架けられたお姫様がね」 ハルは悲しそうに呟いた。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!