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「確かに君はセピア王女ににているけれど、彼女はもう二十歳になる。君はまだ十歳くらいだろう?」
ハルバートは始め困惑した様子だった。
「西の魔女に呪いを架けられてしまいました。お願いハル、信じて」
訴える少女は必死であった。
西の魔女は東国の王子とセピアの結婚を反対していたという噂がある。西の魔女は東国の王子に恋していたのだ。ハルバートはその噂を聞いていただけで信じてはいなかった。
「西の魔女は東国の王子サルトに騙されたのです」
セピアを名乗る少女はなおも言い募る。
「サルトは私と結婚してこの国を乗っとることが目的だと言っていました。私さえ居なくなれば、西の魔女と結婚すると言ったそうです。その上でこの国に戦争を仕掛けるつもりなのです」
ハルバートに必死で告げる少女の瞳には涙が滲んでいた。
「本当にセピア王女なのか?」
「先程からそういっているではありませんか!」
少女は強く言葉を放った。
「西の魔女の呪い、か」
呪いと聞いて魔術師としての知識と経験がハルバートの中で疼いた。
少女を病院へと思っていた足が勝手に速度を落としていった。
人気のない夜の裏道で完全に足を止めたハルバートは少女を地面に下ろした。
少女の不安げな眼差しが見上げてくる。
ハルバートは明かりを生み出すと少女の目線に屈んだ。
瞳を合わせるとゆっくりと少女の頬をなぞった。
「何を?」
少女の怯えた声にハルバートは優しく言ったのだ。
「セピア王女。この呪いは簡単には解けません。俺の力ではどうすることもできそうにありません。お許しください」
「え──?」
少女はきょとんとハルバートを見ていた。少女には魔術の知識はないに等しい。どうしていいかと困るように小首を傾げた。その瞬間だった。強風が吹き荒れて少女を拐った。ハルバートは呆然と闇に佇んだ。
ふっと気色の悪い深紅のドレスを身に纏う女が姿を見せる。西の魔女であった。無気味な高笑いを響かせそうな女だった。
「ハルバート。お久しぶりね。セピア王女は時計塔に繋ぎましょう。そうして永遠に出られないように閉じ込めることにしたわ。そう伝えてちょうだい。私を殺そうとしたお妃様に」
西の魔女はすっと姿を消した。
ハルバートは西の魔女が本体では無いことを知っていた。それだけになにもできなかった。時計塔の鐘がけたたましく鳴り響く。そのとき時空間が歪んだ気がした
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