3章 昔話

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ハルバートはアクリル城に戻り、王と王妃にあったことを話した。 「なんと、そのようなことがまかり通ると思っているのか!」 王は怒り狂い、王妃はきつくドレスを握った。 「姫の居場所は分かっています。様子を見に行き、情報を得てきます」 「しかし、ハル。お主の力では姫は助からないのであろう?」 「はい、残念ながら」 ハルバートは考え込んだあとに深々と頭を下げた。 「かわいそうなセピア。暗い時計塔に閉じ込められてどうやって生きていくというのでしょう」 王妃は椅子によたよたと座り込んだ。 「申し訳ありません、これから時計塔にいって参ります」 ハルバートは蜻蛉返りするように城を飛び出していた。 セピアとはなにかと縁があった。 東国の王子サルトとの縁談が決まってからも相談事をされる仲だった。 それが西の魔女(アイリス)によって年齢を 戻されて、時計塔に捕まってしまったのだ。 気を押さえろと言われても止まらなかった。冷静さがどこかへ消えていた。気が付けば時計塔が目の前にあった。息を切らして、時計塔の最上階へ続く扉を抉じ開けて、螺旋階段を駆け上がった。 最上階にセピアは大人のまま結界に取り込まれていた。 ハルバートの気配に目を開けて驚くように立ち上がる。 「ハル」 「セピア姫、怪我はありませんか?」 「大丈夫です。なぜここへきたのですか!」 セピアが結界に手をつけると結界はうねうねと波紋を作り出す。それを見ただけでも一筋縄ではいかないとハルバートは舌を打った。 「セピア姫のことが心配だったんだ。だけど西の魔女(アイリス)の力は噂以上だ。技術もある。俺の力ではどうすることもできない」 ハルバートは自分の無力さにうちひしがれていた。 「私もここを出る気にはなれません」 ほんの数分離れただけでセピアの意志は強かった。 「この結界から出ると幼い容姿に戻ってしまうようです。この結界から抜け出すことはできるのに。それとこの中では時間が止まってしまうのだと言われました。一生このままだそうです」
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