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プロローグ
うっとうしいほどのせみの大合唱を聞きながら、一条麻衣は開かれた窓からぼんやりと青空を眺めていた。教室にはせわしなくチョークが黒板を打つ音が聞こえる。
彼女が空を見ていたのは、授業に興味がないためではなかった。麻衣には前を向いていたくない別の理由があったのだ。
前を向くと、自分の前の席に飾られている花瓶の花にどうしても目がいってしまう。それを見るたびに、彼女は後悔と罪悪感の念にとらわれてしまうのだ。
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