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図書館のドアが開くと、すっと汗が引く。
ビルの1階が児童書、2階、3階が一般書籍。4階に書庫と事務所と学習室、視聴覚室。5階がカルチャーセンターとカフェ。
エレベーターの前に点検中の札が掛かっている。
涼しくなったと思ったのに。と内階段を上るために児童書コーナーへ足を踏み入れた。
幼稚園に行くか行かないかくらいの小さな子供が案外大勢居た。
絵本を広げる母親の膝の上で、コクリコクリしている女の子が可愛い。
ん、わかる。心地良い。
図書館は結構好きだ。
人が大勢居ても、居なくても、しんとしてみんな、夫々の世界に居る。
読み切れないくらい高い本の山。
見たことも聞いたこともない世界を分入って登る。
或いは、何処までも広い本の海。
活字の波間をゆらゆら漂っていると、やがて眠くなる。
そんなことを考えながら、階段を上がり、受付で学習机の番号札を貰う。
貸出のパソコンの角に折り紙の蝉が一匹止まっていた。
カウンターの上に折り方のプリントと折り紙が置かれている。
僕の視線に気づいたのか、係の女の人が「1枚どうぞ」と微笑みながら言った。
「…はい」
僕は、恥ずかしくて小さな声で応えると、番号札と薄い水色の折り紙を1枚手にして机に向かった。
窓際のカウンターに45席。
No7。一つおきに三人座っている。
テスト期間中とか、夏休み中などはいつも混んでいて、入れ替え制だったりするのだか、今日は空いている。
番号札をケースに差す。7番…。
筆箱やノート、英語のテキストなどを取り出したが、折り紙が気になった。
両脇にはまだ誰も居ない。
折り方を見なくても蝉は折れた。
掌の中の水色の蝉…。
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