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呟いた自分の声に、心臓がドクンッと鳴った。
腰掛けたばかりなのに、階段を駆け下りて、昆虫のコーナーを探した。
蝉単独の書籍はなく、貸出禁止のラベルが貼られている「日本の蝉図鑑」が一冊あるだけだった。
検索機で探してみると、二冊が貸し出され、他の多くは児童書の階にあった。
僕は、1階まで下りて辺りを見渡した。
小学生の頃によく行った図書館の児童書コーナーはこんなに広くも明るくもなかった。
書架もテーブルも低くく作られているせいか、上の階よりずっと広く感じる。
天井から吊り下げられたモビールが、空調の風にゆらゆら揺れて綺麗だ。
母親の膝で眠っていた子はもう居なかったが、どの子もみんな母親と一緒に居た。
平日の昼間なのだから当然といえば当然だけれど、一人くらいお父さんと居てもいいじゃないか。
そう思ったあとで、そんなこと思ったこともなかったのに、なんで急に…。
今、どんな顔をしているのか、見たい。
床に座り込んで絵本を広げている子供に躓かないように気をつけながら、昆虫の棚を探す。
コーナーは直ぐに見つかった。
棚の前に、段ボールで出来た木に、折り紙の蝉やカブト虫が沢山止まっている。
「夏の虫たち」「セミの一生」「ファーブル先生の観察日記」
「マンガでみるセミの一日」
手当たり次第、パラパラとめくってみて、二冊をカウンターで借りる。
パソコンの角に二匹蝉が止まっていた。
サラサラとペンを走らせる音を聞きながら、僕は蝉の本を広げていた。
種類、分布、鳴き声、身体の構造。
卵から孵化し、土に潜るまで。
土の中での生活。
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