~Ⅰ秘密持ちの彼女~

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~Ⅰ秘密持ちの彼女~

 現時刻は午後三時。季節はもう間もなく初夏を迎えようとしている。  俺の名は御川 颯太(みかわそうた)。現在十九歳の大学生だ。俺は今、大学の近くにある喫茶店のテラス席で、紅茶を楽しみながら午後のひと時に酔いしれていた。    俺の住む町は、都会でもなければ田舎でもないような、その中間というべきだろうか。今は学校から少し離れたところにあるアパートで暮らしている。  毎週水曜日は、講義が昼で終わり、帰りにこうして午後のティータイムを楽しむのが習慣だ。   「……ふう、もう夏だなあ」  俺は、少しずつ夏の装いへ変化している町に目をやった。そして、手に持っていたカップを受け皿に戻したとき、穏やかな時間は強制終了となってしまう。  突然、肩に衝撃が走った。 「よう、颯太! 喫茶店で紅茶とは、相変わらず気取ってるなあ」 「なっ⁉ 優馬か、ったく俺のひと時を邪魔しやがって」  俺は、肩に手をかけて笑っている親友を見やった。こいつは夏宮 優馬(なつみやゆうま)と言う。高校の時に意気投合し、それからはずっと親友だ。
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