第一章「こんなことって」

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一ノ瀬 亜緒(あお)、何て可愛げのない名前だろう。アオ、なんて最悪。もっと、女の子らしい名前が良かったのに。 小さな頃は親に散々文句言って、少し成長してからは漢字の意味を散々調べて。「亜」に大した意味なんてないと知った時には、更に両親を責めた。 しかも、「控えめ」とか「お淑やか」とかそんな意味合いで使われることもあるって。冗談じゃない。 そんな捻くれた思考の私は、見事に捻くれたまま育ち。都合が悪いことが起こると大抵を名前のせいにした。 そんな一人娘を咎めない両親は、私のことが可愛くて仕方ない。不妊治療の末の、待望の子らしいから。 それなりに裕福な生活、故に私の我儘なんか逆に可愛いおねだりにしか見えないみたい。 ていうか、そんなに可愛いなら、待望の子供なら、尚更もっと可愛い名前にして欲しかったのに。
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