第四章「拗らせ女子の苦悩」

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「それで、彼私が喜ぶことは何でもしてあげたいって。本当、優しいですよねぇ〜」 今すぐ、顔面ぶん殴ってやりたい。 ーー 私が働くこの百貨店は都会のど真ん中、とは言わないけど中々の中心地に聳え立つ老舗。創業は古いけど時代の流れに合わせて様々な変化を重ね、残す所は残し変える所は変える臨機応変な営業方針。 お陰で大型ショッピングモール時代の昨今も順調に売上を伸ばしている。 同県にも何店舗かあって、中でも私が働くこの店はどちらかというと老舗色が強い。煌びやかな内装、ハイブランドが軒を連ねる店内、有名処が並ぶレストラン街。そして、私達受付。 今では死語になりつつあるエレベーターガールも受付が担当、意外と外国人に受けが良い。 正面受付、地下のサービスカウンター、エレベーター担当、などが主な業務。煌びやかな内装に負けない上品かつ目立つ制服と、バッチリのメイクにハイヒール。一瞬の気も抜けない、言わば女の戦場。 そんな部署だけあって、部長や課長などの役職以外は全員女。それも、30代前半までの自分に自信があって気の強い性格の女ばっかり。 自信満々=性格が悪いってことではないけど、仕事中は殺伐としてるというか笑顔の裏では結構色々あったりなかったり。私は別に上にのし上がりたいとかないから良いんだけど、なんせ愛想ないから友達も居ない。 だからこそ、唯一プライベートで私に寄ってきてくれたこの隣の後輩を私は可愛がっていた、というより好きだったのに。 パッと見は私が好きだった頃の彼女と何ら変わらない、笑顔もそのまま。けど、話す内容も表情に滲み出てる感情も全然違う。 私から彼氏を寝取ったこの女は、私を皆の前で堂々と罵り、嘲り、鼻高々に笑う。あんなに可愛いと思っていた笑顔は、今や変な優越感に歪んだ醜いものへと変わった。
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