第四章「拗らせ女子の苦悩」

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今日の私のペアはこの泥棒猫ーーもとい二葉鈴(ふたば すず)、二十四歳。大卒の正社員として入社後、すぐこの部署に配属された彼女は、当時から近寄りがたいツンツンした嫌な女として扱われていた私に、なぜか懐いた。 素直じゃない私は彼女のそんな態度も冷たくあしらっていたんだけど、それでも彼女は私から離れていかなかった。そんな彼女とだけは、私もいつしかプライベートを話すようになり。仕事帰りにご飯に行くようになり。 そこにたまたま迎えに来てくれた廉人を、私は何の疑念も持たず彼女に紹介したのだった。そしてその結果が、これ。 会社内では唯一私なりに心を許していた後輩と、約三年付き合った私のあらゆる初めてを捧げた男、廉人。二人は呆気なく私を捨て、手に手を取り合い男女の関係を結び。 そして二葉鈴は事後すぐに私に報告、しかもご丁寧に証拠写真を自分で撮影するという。廉人と私はもちろん破局、鈴の話では今廉人と付き合っているらしい。 「もうすぐ閉店だからって、馬鹿なおしゃべりばかりしないでくれる?」 ニッコリ、隣の鈴に微笑む私。クソ、地下のサービスカウンター何でコイツとペア勤務なんだよ。って、仕事なんだから仕方ない。 「廉人君の様子、知りたいかなって」 私に負けず劣らず、ニッコリと微笑んでみせる。この野郎、私の方が出身大学上なんだからな、なんて頭の中で鈴に勝てる自分のポイントを並べながら平常心を保とうとする。 「もう、業務に必要なこと以外私に話しかけないで。貴女の話、興味ないから」 「聞いたら泣いちゃうから、の間違いじゃなくて?」 ああ言えばこう言う、あーもう本当ぶっ飛ばしたい。
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