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…ダメよ亜緒。こんな尻軽、相手にするな。
「あのね二葉さん、貴女が彼氏とどうだろうと私には関係のないことなの。勤務中に貴女のどうでも良い私生活を聞かされる身にもなって?分かる?私、貴女に興味ないの」
さも平気な顔でそう言えば、彼女の勝ち誇った笑みが途端に歪んだ。
「…何よ、悔しい癖に。分かる?廉人君はアンタじゃなくて私が好きなのよ?アンタとのエッチより、私との方が何倍も良いって。アンタなんか、初めから廉人君に愛されてなかったんだから!」
「それが、貴女に関係あることなの?」
「…はぁ?」
「廉人が好きで、だから私から取ったんでしょ?成功して良かったじゃない。私が愛されていようがいまいが、そこ関係ないでしょ。いちいちアピールしなくて良いから」
スッと視線を逸らすと同時に、閉店時間を知らせる音楽が店内に流れ出す。
「ち、ちょっと待ちなさ…」
私の腕を掴もうとする鈴の手を交わして立ち上がると、目の前を通り過ぎるお客様に頭を下げて挨拶をした。
こんな女も、あんな男も、もう私の人生に一ミリの関係もない。どうだって良いし、関わりたくもない。
本来自分から部署異動の願いではできない決まりだけど、精神的に辛いとか何とか部長に申し出て鈴のいない部署に異動させてもらおうかな。
笑顔で挨拶しながら、頭の中でそんなことを考える。鈴は、いつの間にかバックヤードへ引っ込んでしまっていた。
おい、ちゃんと最後まで仕事しろ。
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