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「私の彼氏の友達が前にここに来た時、受付に一ノ瀬さんが居るの見て一目惚れしちゃったみたいで。紹介してくれって、頼まれたの」
成る程、二対二って内男女各一人は三上さんカップルな訳ね。
「その人普段凄く仕事忙しいみたいで、今日たまたま残業なしで帰れるからどうかって彼氏から連絡来て…やっぱり、嫌かな」
「嫌ではないですけど…」
三上さんにはお世話になってるし即断るのも悪い、けど行きたいかと言われると微妙なところでもある。
「もしかして、好きな人とか居る?居るなら、遠慮せず断って?」
控えめに微笑む三上さん。
好きな人?好きな人なんか、別に……
ーー亜緒
一瞬。たった一瞬顔が思い浮かんで、私はそれを振り払うように小さく頭を振った。
「そんな人、居ません。私で良ければご一緒にさせていただきます」
「ホントに?良いの?」
「でも私、今出会いとか彼氏とか考えられなくて、ご期待には添えないかもしれません。すいません」
小さく頭を下げると、三上さんが否定するように胸の前で手を軽く振った。
「ごめんね、その辺気にしないで。楽しく飲んで、美味しいもの食べよう。もちろん、向こうの奢りだから」
笑顔の三上さんに、私も少しだけ口角を上げた。
…もう、一瞬たりとも私の脳内に出てこないでほしい。好きでも何でも、ないんだから。
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