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夜、朔の願いが叶うことはなかった。残念ながら、雲はひとつもなかった。
「さあ、やるか」
全身真っ黒の忍び装束に身を包んだ朔は、素早く屋根の上に飛び移る。
おはつの家には、いくつかの人影。
「ちっ、集団だったか。まあ、でもやるしかない」
集団の頭らしき男が口を開いた。
「さっさと、攫ってしまうぞ」
「お頭、俺が裏から回ってきますので、お頭は……」
プシュッ、ブシャー!
次の瞬間、仲間の首が勢いよく吹っ飛び、血が吹き上がった。
「うわぁぁぁ」
口々に声を上げたが頭は冷静に言った。
「誰だ!?出てこい!」
「さすがはお頭さん。私のことは怖くないのね。でも、残念。今日であんた達の組もおしまいだね」
朔は不気味な笑いを浮かべ、そう言った。
「お前を殺せば何の問題はないだろう」
「お頭、あの左右で色の違う瞳を持っている特徴は、間違いない『漆黒の朔』物の怪ですぜ。そんな相手に適うわけ……」
お頭は子分たちの言葉に喝を入れた。
「黙れ!殺してしまえば、そんなの関係ないだろう。行くぞ、お前たち!」
「うりゃぁ」
人攫いたちは、一斉に朔に向かって飛びかかっていった。
朔は素早く交わし、次々と斬っていく。まるで、草木の剪定をするように、淡々と殺していく。
あっという間に、全てが終わって、一息つこうとしたその時だった。
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