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「君、なかなかやるねえ。一体何者なの?」
誰かが朔に声をかけた。それに対して朔は、こう答えた。
「誰でもいいだろ。名前を聞くなら、先に自分が名乗るってもんが筋じゃないんですか?」
そう言われて、少し考え込んだ男だったが、こう答えた。
「うーん。名乗るなって言われているんだけど、まぁいいや。僕は沖田総司。あー、土方さんに怒られるな、これは……。あ、名乗ったんだから、次は君の番だよ。君は一体何者なの?」
見た感じ二十歳前後だろうか?この男は沖田総司というらしい。仲間には、『土方さん』といういう人もいるのか。よし、ここは逃げよう。
朔はそう決意し、体の向きを変えようとした。すると沖田は朔に向かって言った。
「おっと、逃がすわけにはいかないんだよね。君の名前もまだ聞いていないし」
「しつこいなぁ。私に名前なんかない。この辺りでは、『朔』と呼ばれているけど」
「ふーん。で、本当の名前は?」
しつこい沖田に頭がきた朔は少し強めの口調で言った。
「だから、名前はないと言っただろう。とうの昔に名前は捨てた」
沖田は諦めたのか、それ以上名前を深く聞くことはなかった。
「まあ、何でもいいや。でも、取り敢えず屯所まで一緒に来てもらうよ。手荒な真似はしたくないから、おとなしく来て欲しいんだけど……」
もちろん行く気もないし、捕まる気もない。
「断る」
「だよねえ。じゃあ、力づくで来てもらおうか。手加減できないかも知らないけど、その時はごめんね」
そう言って、沖田は刀を抜いて突っ込んできた。
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