50人が本棚に入れています
本棚に追加
朔は深呼吸を一つして、苦無を握る。こうやつて、一対一で正面から戦うのは、不利になる。刀と苦無では間合いが全然違う。 しかし、朔はうまく刀を躱しながら、間合いに入る。
これなら勝てる!
朔は一気に間合いに詰め寄り、最後の一撃を加えようとしたその時だった。
「大丈夫か? 総司」
「ちっ、仲間か」
朔は一歩引いて、もう一人の相手を見据える。
向こうの方から走ってきた男も沖田と同じように、浅葱色の段駄羅模様の羽織を着ている。
二対一では、勝てそうにない。いや、確実に負けるだろう。朔の得意分野は、暗殺や不意打ちなのだから。
「……逃げよう」朔はそう決心し、隙を見て走り出した。
「ちょっと、待ちなよ」
「追いかけるぞ、総司」
沖田ともう一人の男は朔の後を追いかけていく。
今夜は、満月だから、闇の中に紛れ込むことは難しい。満月に殺しをしたことが間違いだったと朔はこの時思った。
最初のコメントを投稿しよう!