いつもの時間

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いつもの時間

バイトで酷使した体を、ぼすんとベッドへ投げ出す。 疲れた。 もう寝てしまおう。 今にも潰れそうな古いアパートの外からは、風の音と窓が軋む音しか聞こえてこない。 現在の時刻、午前1時。 明日はバイトは入っていないのだし、ゆっくり休もう。 そう思って眼を閉じた。 …ぐーーー 閉じていたはずの瞼をゆっくりと上げる。 空腹感からか、眼が覚めてしまった。 枕元にあるデジタル時計には、最後に見た時より少しだけ増えた数字が見えた。 それでも、時刻はまだ2時を少し越えたところであった。 腹がへった。 これではゆっくり眠れない。 たしか、一番近くのコンビニまで5分くらいで行けたはずだ。 行ってこよう。 ぎしりと音を立てて、下りるはずのなかったベッドから足を動かす。 これは、午前3時と午後3時に起きたたわいもない話である。 そう。たわいもない話から起きた一つの神隠しの話である。 大きめの器に入ったパスタを店員に温めてもらい、おにぎりと菓子パン、デザートにプリンを購入しペットボトルの紅茶を手にコンビニのイートインスペースへ移動する。 思っていた以上に空腹だったのと、こんな時間まで美味しそうに売り場で客を待つ健気な料理たちに眼が眩んだせいであったのだろう。 思わず財布を軽くしてしまった。 おにぎりと菓子パンは目覚めてから食べようと購入した物だったが、さすがに食べ過ぎかと気付いた頃には食後の一服をコーヒーマシンで淹れていた。 これ以上は店員に悪いと思い、カップに蓋をして店を出る。 外はそれほど寒くはなく、かといって暑いというほどではない。 近くの公園に寄って、温かい内に手に持つカフェラテを飲んでしまおう。 アパートとコンビニの間にある小さな公園には、当然誰もいない。 外灯に照らされるベンチに座ってカップを隣に置く。 夜空を見上げると、細い月が傾いていた。 もうすぐ30歳になる自分は、未だにフリーターを名乗っている。物書きを夢にみて選んだこの道だが、これもそろそろ限界なのであろうか。 書きたい 稼げない 書きたい 読んでもらえない 書きたい 評価されない 書いている 時間が足りない 書けない アイデアが浮かんでこない そんなことを続けた。 はあ、と息を吐き出しズボンのポケットから小さなメモ帳とボールペンを取り出す。 どんなに迷っても、最後は結局書きたい欲求が勝ってしまうというのが自分なのだ。 まだ温かいカフェラテを一口飲み、ボールペンを走らす。 時刻は午後3時。
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