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目を開けると眩しい、反射した禿げのおっさんの頭より眩しい。どうやら仰向けになっているらしく心地よい風が肌を触り、右を見ても芝。左を見ても芝と辺りを確認してから視点を正面に戻すと――タコの如く口を尖らせた男の顔面。
「ぎゃぁぁぁ! 気持ちわりぃぃー!」
ムカデもビックリの速さで上体を起こし後ずさりをして、呼吸を整える。
「もぉ酷いわダーリン……」
「誰がダーリンだ!」
状況を見ていたのか口を抑えクスクスと笑ったリリアナが近寄ってくる。
「ふふふ、お目覚めですか? 九条愁也さん」
「ひっでぇ目覚めだけどな……」
唇は納豆を食べた後みたいベタついており、服には唾液の跡がついている。
「とゆうか俺、名前教えたっけ?」
「私は読み書きは出来ません。と言いませんでしたか?」
「じゃあ……どうして」
「シェリィさんのお陰なんです」
いつの間にか俺と腕を組み、キラキラと眼を輝かせながら近づいてくるシェリィの顔を手で阻止しながら『どうやったのかな?』とリリアナに尋ねると苦笑いしている。
「覚えてないんですか? なら、聞かない方が精神的に良いと思います……けど?」
リリアナが唇を叩いてジェスチャーしてくる。ん? まさか、この唇のベタつきって……恐る恐るシェリィの方へ視線を向けると舌で自らの唇をグルりと舐めていた。続けて目を点にしながら、リリアナの方へ視線を向けてみると『愁也さんが素直に開けないから悪いんですよーだ』とそっぽを向く。
「あたしはね? ちゅーした人間の情報を抜き取る技……小悪魔のキスってのを使えるの、ダーリンの唇とても弾力があって美味しかったわ……ご馳走さ・ま」
あぁなるほど。答えに辿り着き、頷きながら見上げる天は雲一つ無い晴天。なんて綺麗な蒼空なんだ、少し速いけど流星を掛けるのも悪くないかな……と俺は、口から流れる流星を蒼空に掛けた。
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