もう3時

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私は両手を広げて子供達を静かにぎゅっと抱きしめる。 いつもはもうお兄ちゃんになった2人は、 「 やめろよ。」 なんて言うけど今は2人とも されるままだ。 静かにぎゅっと抱きしめて私は涙を流す。 ( ありがとうございます。神さま。 おじいちゃんとおばあちゃん、ありがとうございます。 いつも私の側で見守ってくれている金髪のムキムキマッチョな方、シルクハットの紳士の方。 ありがとうございます。 子供達を助けてくださったアメリカの方たち。 本当にありがとうございます。 私は一生後悔して生きていくところだったんだ。 この部屋に入った時に感じた違和感は本当だったんだ。 もし買い物に行っている間に子供達が死んでしまっていたら私はどうなるだろう。 ここはUS A、児童虐待で きっと逮捕されて牢屋の中だわ。 夫を許すことが出来るかしら。 離婚することになるのかな。 私は自分を許すことが出来るかしら。 ありがとうございます、神さま。 私はかけがえのないものをこの手の中に今持っている。 お洋服も靴も何もいらない。 私の大切なものは、そんなものじゃない。 私は母親とは違うといつも思ってたのに。 私が間違えていました。 今まで子供達から目を離さないように、あんなに頑張ってきたのに。 全てを無くすところだったんだ。 私の馬鹿。 よくわかりました。) 涙を流しながら目を開けると夫も、 「 ごめんね。」 と言って泣きながら抱きついてくる。 ( 有り難い。 やっぱりこの人は優しい人だわ。 私にはもったいない人だわ。 怒りに任せて怒鳴らないで良かった。 いつも両親に怒鳴られて育ったから、私は怒鳴るのがとても上手い。 何の役にもたたないけど。) いつのまにか空がオレンジ色に染まっている。 部屋の中にオレンジ色の光がキラキラと差し込む。 広い部屋の中に家族4人で固まって抱き合っている。 「 時計を見た時、もう3時だと思った時、ものすごい胸騒ぎがしたの。 慌てて帰って来たけど、遅かったね。」 「 ううん、みんな生きてて良かったね。」 美しい光の中に包まれて、これ以上ない幸せの中に私はいる。
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