80人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
「陽二殿は本当に優しい方でござる。」
ぼたもちがしみじみと呟いた。
「うん。陽二さんのナポリタンも絶品だしね。」
「詩殿は食いしん坊でござるな。どうして太らないのか不思議にござる。」
ぼたもちがコクンと首を傾げて僕を見上げる。潤んだブラックオパールのような目が可愛らしい。
「…太りにくい体質なんだよ。好きなだけ食べられるけど、たまに女子見たいって言われるのが嫌だな。」
頭を掻きながら言うと、翡翠さんは不思議そうな顔をしている。
「…羨ましい。」
不意に、翡翠さんが呟いた。
「翡翠さんも痩せ型じゃないですか。」
翡翠さんはモデルのようにしなやかな体型を持っている。翡翠さんの方が羨ましがられていると思うが。
「翡翠は毎日10キロ走ってこの体型をキープしているでござる。」
ぼたもちがなぜか自慢げに言う。
「ええ!?凄いですね。何かスポーツやっているんですか?」
確か、翡翠さんは帰宅部だった筈だ。どうしてそんな事をしているのだろう。
「何もしてない。努力するのが好きなの。」
そう言った翡翠さんの横顔があまりにも繊細で綺麗で、なぜかものすごく情けない気持ちになった。
「かっこいいですね。僕なんかいつも3日坊主で。」
自虐をしてみると、更に惨めな気持ちになってきた。込み上げる灰色の感情を押し戻すように、冷めてしまった紅茶を流し込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!