冴えない高校生

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「陽二殿は本当に優しい方でござる。」  ぼたもちがしみじみと呟いた。 「うん。陽二さんのナポリタンも絶品だしね。」 「詩殿は食いしん坊でござるな。どうして太らないのか不思議にござる。」  ぼたもちがコクンと首を傾げて僕を見上げる。潤んだブラックオパールのような目が可愛らしい。 「…太りにくい体質なんだよ。好きなだけ食べられるけど、たまに女子見たいって言われるのが嫌だな。」  頭を掻きながら言うと、翡翠さんは不思議そうな顔をしている。 「…羨ましい。」  不意に、翡翠さんが呟いた。 「翡翠さんも痩せ型じゃないですか。」  翡翠さんはモデルのようにしなやかな体型を持っている。翡翠さんの方が羨ましがられていると思うが。 「翡翠は毎日10キロ走ってこの体型をキープしているでござる。」  ぼたもちがなぜか自慢げに言う。 「ええ!?凄いですね。何かスポーツやっているんですか?」  確か、翡翠さんは帰宅部だった筈だ。どうしてそんな事をしているのだろう。 「何もしてない。努力するのが好きなの。」  そう言った翡翠さんの横顔があまりにも繊細で綺麗で、なぜかものすごく情けない気持ちになった。 「かっこいいですね。僕なんかいつも3日坊主で。」  自虐をしてみると、更に惨めな気持ちになってきた。込み上げる灰色の感情を押し戻すように、冷めてしまった紅茶を流し込んだ。
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