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「詩殿も何か始めてみたらどうでござるか?」
重たい空気を吹き飛ばすような元気な声でぼたもちが言う。
「…いいと思う。」
翡翠さんもぼたもちの提案に同調した。
「え、始めるって言ったって、何をすればいいのかな?」
「それは自分で考えるべきでござるよ。」
翡翠さんもコクリと頷いた。
「うーん。運動音痴だからスポーツはなぁ。前にやめちゃったから、楽器やカメラもちょっとキツイかな。」
できない事を口に出す度自分の不甲斐なさを痛感した。ぼたもちも心配そうに見つめている。僕はその視線に耐えられなくて、思わず頭を抱えた。
「…小説はどう?」
重い沈黙を破ったのは意外にも翡翠さんだった。
「小説ならお金もかからないし、勿論運動もしない。それに、詩殿は現代文が得意だと言っていたでござるな。」
「…うん。それに、たまに文庫本を持ってくる時があるから。」
翡翠さんが吸い込まれるような桃花眼で見つめる。こんなに綺麗な人の眼中に僕なんかいないと思っていたから、嬉しかった。
「…僕にも書けるかな?」
「勿論でござるよ!詩殿の小説、読んでみたいでござる。」
ぼたもちが目を輝かせて言う。
「本当?嬉しいな。…でも、何を書いたらいいのかさっぱりわからないよ。」
「確かに、一重に小説と言っても恋愛系に青春系、エッセイ等、たくさんあるでござる。」
「ファンタジー、ミステリー、私の趣味だけど、ホラーも面白いと思う。」
ぼたもちと翡翠さんが挙げたジャンルだけでもかなりの量がある。
「なんか、自信無くなってきた。」
思わずそんな弱音を零してしまった。
「…難しく考えなくていいの。書きたいことを書きたいときに、自由に書けばいい。」
翡翠さんが柔らかく微笑んだ。
書きたいことを書きたいときに、難しく考えないで自由に……。
僕は自分の書きたいと思える好きなものを連想した。
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