冴えない高校生

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 扉を開けると、ガラス細工のように美しく可憐な少女が「いらっしゃいませ。」と言ってくれる。レトロで落ち着く空間の中で紅茶を一口飲んで、侍口調のハリネズミとお喋りしながらお気に入りのタルトタタンを食べる。  頭の中に浮かんだのは、herissonだった。 「僕はこのお店を書きたいです。」  翡翠さんとぼたもちに向かって、はっきりと言った。 「いいと思うでござる。ここはユニークな客も多いし、面白いものが書けるに違いないでござるよ。」 「…素敵だと思う。」  ぼたもちも翡翠さんも楽しそうに言う。 「よかった。僕、やってみます。上手くできるかわからないけど、頑張ります!」  よし、と気合を入れた僕に翡翠さんは優しく笑いかけてくれた。 カランカラン、不意にドアベルが鳴る。 「お、詩殿。登場人物候補が来たようでござるよ。」  ぼたもちの声に僕は頷いた。
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