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「花園さんは家事が苦手。」
控えめな声で独り言を言いながらレザーの手帳に書き込む。あとは…。
「絵を書くのが得意…だったな。」
花園さんの絵、見てみたいな。きっと繊細で上品な絵なんだろうな。でも、ダイナミックで社会の喧騒を表すような迫力のある絵を描いていても面白いな、と想像すると、もの凄く好奇心が掻き立てられた。
「そうだ、この気持ちを創作に向けなくちゃ。」
まだまだ情報足らずだけど、冒頭くらいなら書けるはず。
物で溢れていても、そこそこ片付けてある勉強机の引き出しから原稿用紙と鉛筆を取り出した。先が丸まった鉛筆を、電動の鉛筆削りが一瞬で鋭利にしてくれる。そんな日常的なことさえも、僕の心を躍らせた。
「午後3時の魔法。」
タイトルを書き込むと、表情のない原稿用紙が少し華やいだ気がした。
次は作者名だ。普通に三坂詩でも良いけど、主人公も三坂詩だからな。ごく普通の顔立ちなのに、イケメンと設定してしまった事がバレてしまうかもしれない。でも、翡翠さんやぼたもちが僕だってわかるようにしないと。
「小針紅大」
しばし悩んだあと、鉛筆を動かした。小さい針、はハリネズミを表している。紅は紅茶を、大は…特になんの意味もない。ぼたもちに言ったら詰めが甘いでござる、なんて言われそうだな。そう考えると思わず顔が綻んでいた。僕は、僕が思っていた以上に、herissonが好きみたいだ。
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