冴えない高校生

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 雲ひとつない晴天の下で、ミルクティーみたいな色をした猫が、しなやかな身体を伸ばして欠伸をする。その顔があまりにも間抜けだったものだから、思わず緩んでしまった顔で、石畳の道を歩いて行く。  今日は僕の色褪せた日常の中で、唯一の癒しの日。  日曜日の午後3時、僕は必ず訪れる場所がある。  木製の小さな看板が見えると、自然と心が躍り始めて、足取りも軽やかになる。 そのままスキップしそうな勢いで進んで行くと、Cafe herissonの文字がハッキリと見えた。  初めて来た時、フランス語だとわからずにヘリッソンと読んでしまい、ハリネズミにエリソンでござる!と怒られたことを思い出す。  手入れの行き届いて、活き活きしたオリーブの木にラベンダーやバジル。カフェと言うより、喫茶店みたいな外観。僕の大好きなherissonだ。  外観を見ているだけで、30分は言葉を浮かべ続けられると思うけれど、早く入らないと、ティータイムの時間が縮まってしまう。  僕はアンティークな金色のドアノブに手をかけた。
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