冴えない高校生

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「はい、いつもの。」  カウンター席に腰掛けると、翡翠さんがタルトタタンと紅茶を、いつも通りの無表情で提供してくれる。 「相変わらず無愛想でござ…むぐっ。」  また翡翠さんの琴線に触れるようなことを言い出すぼたもちの口を慌てて塞ぐ。 「またゲージに入りたいの?」  小声で言うと、ぼたもちはくるりと丸くなった。 「はい、おやつ。」  翡翠さんがぼたもちの前に並々と水が注がれたコップを置く。 「翡翠。これはなんでござるか?」 「…水。」  キョトンとした顔で尋ねるぼたもちに、翡翠さんは長い睫毛に縁取られた大きな目で圧を送る。 「そ、それはわかるでござるが、おやつが水なんて、聞いたこともないでござる。」 「…私はどうせ無愛想。」  翡翠さんがムスッとした顔で言った。どうやら聞こえていたみたいだ。 「ぼたもち、謝って。」 「…解せぬ。」  ぼたもちはやたらキリッとした目を向ける。 「言いたいだけでしょ、それ。ふざけてないで、早く謝らないと。」 「ひ、ひすいどのー。翡翠殿は無愛想なのが良いところというか、ぱ、ぱーそなりてぃってやつでござるよ。」  オロオロと言い訳するぼたもちを、翡翠さんはジロリと睨んだ。若干つり目で、三白眼気味な翡翠さんの睨めつける目は相当怖い。 「…ごめんなさい。」  氷のような視線に耐えかねたぼたもちが、シュンとした顔で謝った。 「…はい、おやつ。」  翡翠さんの表情がフッと和らいで、ぼたもちの前に小さくカットされたりんごが乗った皿が置かれた。僕は心底安堵して思わずため息をつく。 「紅茶、冷める。」  翡翠さんが僕のティーカップを指さして言った。
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