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「ムギちゃん、元気にしてるかな?」
シャリシャリ心地よい音を立ててりんごを齧るぼたもちに言う。
あれから2週間、ムギちゃんは一度もここへ顔を出していない。
「大丈夫でござるよ。詩殿がばっちり解決したでござるから。」
ぼたもちは呑気にりんごを頬張る。
「私も大丈夫だと思う。いい顔してたから。」
翡翠さんの声は妙な説得力を孕んだ落ち着く声だ。彼女の言葉に心底安堵した。
「次はどんなお客が来るのか、楽しみでござる。」
ぼたもちがいたずらっぽい声で言う。
「そうね。」
翡翠さんは小さく頷くと、カモミールのハーブティーを用意し始めた。僕はいつも通り紅茶とタルトタタンだから、それはまだ見ぬお客さんのものだろう。翡翠さんとぼたもちのエスパーにも、もう慣れた。
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