39人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
音を立てぬように、這いつくばりながら牢獄の扉に近づく。扉の鍵も簡単に壊すことが
出来た。
ここまで、拍子抜けする位に、容易に事が運んでいる。
だが、焦りは禁物だ。
ここは、まだ海の真ん中。ここで、海に飛び込んでも、力尽きて魚の餌になるだけだ。
泳ぎ着ける距離に、島あるいは船がある場合でないと、助かる可能性は低い。
さもなければ、俺が乗ってきた船を奪って逃げるか……。
それより、もしも、夜明けまでに脱出の機会が訪れなかったらどうしよう。日が昇り、
髪の毛の光が失せたら、俺が換りの子でない事がバレてしまう。
髪を隠して胡麻かすか? ブジンどもなら騙せるかもしれない。
などと、取り留めもないことを考えていた時だった。
ゴソリと何かが動く音がした。
俺は大急ぎで、檻の奥に動いて蹲った。
静寂が降りてくる。
見張りのブジンに動きはない。
ゴソゴソ。
再び、何かが蠢く物音がした。
ブジンはそのままだ。どうやら、奴らはこの程度の音には反応しないらしい。
俺は上半身を起こして、物音の方向に目を凝らす。
よく見れば、鉄格子の向こうに別な檻が続いている。
そこに、何者かが膝を抱えて座っている。
見たところ、まだ子供だ。10歳前後だろうか? フードを被っているので、顔は全く
見えない。そのフードの奥が、ぼんやり光っているように見える。
本物の換りの子?
そんな考えが頭に浮かぶ。
最初のコメントを投稿しよう!