第二章 換りの子

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 音を立てぬように、這いつくばりながら牢獄の扉に近づく。扉の鍵も簡単に壊すことが 出来た。  ここまで、拍子抜けする位に、容易に事が運んでいる。  だが、焦りは禁物だ。  ここは、まだ海の真ん中。ここで、海に飛び込んでも、力尽きて魚の餌になるだけだ。 泳ぎ着ける距離に、島あるいは船がある場合でないと、助かる可能性は低い。  さもなければ、俺が乗ってきた船を奪って逃げるか……。  それより、もしも、夜明けまでに脱出の機会が訪れなかったらどうしよう。日が昇り、 髪の毛の光が失せたら、俺が換りの子でない事がバレてしまう。  髪を隠して胡麻かすか? ブジンどもなら騙せるかもしれない。  などと、取り留めもないことを考えていた時だった。  ゴソリと何かが動く音がした。  俺は大急ぎで、檻の奥に動いて蹲った。  静寂が降りてくる。  見張りのブジンに動きはない。  ゴソゴソ。  再び、何かが蠢く物音がした。  ブジンはそのままだ。どうやら、奴らはこの程度の音には反応しないらしい。  俺は上半身を起こして、物音の方向に目を凝らす。  よく見れば、鉄格子の向こうに別な檻が続いている。  そこに、何者かが膝を抱えて座っている。  見たところ、まだ子供だ。10歳前後だろうか? フードを被っているので、顔は全く 見えない。そのフードの奥が、ぼんやり光っているように見える。  本物の換りの子?  そんな考えが頭に浮かぶ。
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