第二章 換りの子

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「おい!」  小声で声をかける。  呼びかけに反応し、フードの子が顔をこちらに向ける。  そこに見えたのは、可愛げな子供の顔だった。想像通り、額にかかる髪が輝いている。 「おい! お前が、本物の換りの子なのか?」  その問いには答えず、フードの子は膝の中に顔をうずめる。  どうやら、言葉が通じないようだ。  そういえば、見たこともない革製の粗末な服を着ている。履いている靴も、革を編んだ 物の様に見える。おそらく、俺の知らない異国から連れてこられたのだろう。  ドスッドスッ。  背後で足音が聞こえた。  今の俺の声を聞きつけて、見張りのブジンがこちらの様子を伺っている。  俺は慌ててその場に横になる。  ブジンが近づいてきて、俺を凝視する。  イヤな汗が背中を流れる。氷の様に体を固めてジッと待つ。  暫くすると、ブジンは元の立ち位置に戻っていった。  こいつらが賢くなくて助かった。と胸を撫でおろす。  フードの子は気になるが、それより自分の事を考えよう。と気持ちを切り替える。  まず、脱出を決行するのは、この船が島か他の船に近づいた時。  日が昇ったら、服で頭を隠してブジンをやり過ごす。あいつらなら、誤魔化せそうだ。  そう決めると、気が抜けたのか、急に眠気が襲ってきた。  そうして俺は、波のうねりを揺り籠として、深い眠りの底へ、沈殿していった。
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