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「おい!」
小声で声をかける。
呼びかけに反応し、フードの子が顔をこちらに向ける。
そこに見えたのは、可愛げな子供の顔だった。想像通り、額にかかる髪が輝いている。
「おい! お前が、本物の換りの子なのか?」
その問いには答えず、フードの子は膝の中に顔をうずめる。
どうやら、言葉が通じないようだ。
そういえば、見たこともない革製の粗末な服を着ている。履いている靴も、革を編んだ
物の様に見える。おそらく、俺の知らない異国から連れてこられたのだろう。
ドスッドスッ。
背後で足音が聞こえた。
今の俺の声を聞きつけて、見張りのブジンがこちらの様子を伺っている。
俺は慌ててその場に横になる。
ブジンが近づいてきて、俺を凝視する。
イヤな汗が背中を流れる。氷の様に体を固めてジッと待つ。
暫くすると、ブジンは元の立ち位置に戻っていった。
こいつらが賢くなくて助かった。と胸を撫でおろす。
フードの子は気になるが、それより自分の事を考えよう。と気持ちを切り替える。
まず、脱出を決行するのは、この船が島か他の船に近づいた時。
日が昇ったら、服で頭を隠してブジンをやり過ごす。あいつらなら、誤魔化せそうだ。
そう決めると、気が抜けたのか、急に眠気が襲ってきた。
そうして俺は、波のうねりを揺り籠として、深い眠りの底へ、沈殿していった。
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