第二章 換りの子

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 いつの間にか眠り込んでいた。  月が西の空に傾き、空が黒から紺へと模様替えしている。  オレンジ色を帯び始めた東の空が、夜明けの到来を前ぶれる。  綺麗だ……。  登る太陽に心を奪われる。  ハッ、いけない。  日の出とともに、夜光石は光を失う。そうなったら、自分が換りの子でないことが露見 してしまう。  チョッキを脱ぎ、頭に巻き付ける。少しばかり寒くなるが、命には代えられない。  見張りのブジンの様子を伺う。  昨夜の立ち位置から微動だにしていない。寝ずの番をしていたのだろうか。  もぬけの殻の鎧が、グゥグゥ寝るとも思えないが。  ギャァ、ギャァ。  騒々しい声とともに、海鳥が上空を通過した。  トリ……、とり……、鳥!!!  鳥だ。鳥がいるという事は、陸地が近い!  勢いよく立ち上がり、水平線に目を凝らす。  あった!  幽霊船の舳先の向こうに、島影が見える。  やった。脱出のチャンスだ。希望が見えて来た気がする。  思わず声が出そうになるのを抑え込み、座りこんで小さなガッツポーズを作る。  だが、その希望は、直ぐに絶望へと塗り替えられた。  俺を乗せた幽霊船が、その島に向って進んでいることに気が付いたからだ。  船乗り達は、人買い船の航路近くに人ヶ島があると言っていた。  それに、幽霊船の目的はエジエルに換わり子を届けること。  そして、この船には換わり子が乗っている。俺は紛い物だが、もう一人は本物かもしれ ない。ブジン達は、捕らえた換りの子を人ヶ島に運ぼうとするだろう。  こう考えていけば、幽霊船が向かっているあの島は、人ヶ島に違いない。
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