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いつの間にか眠り込んでいた。
月が西の空に傾き、空が黒から紺へと模様替えしている。
オレンジ色を帯び始めた東の空が、夜明けの到来を前ぶれる。
綺麗だ……。
登る太陽に心を奪われる。
ハッ、いけない。
日の出とともに、夜光石は光を失う。そうなったら、自分が換りの子でないことが露見
してしまう。
チョッキを脱ぎ、頭に巻き付ける。少しばかり寒くなるが、命には代えられない。
見張りのブジンの様子を伺う。
昨夜の立ち位置から微動だにしていない。寝ずの番をしていたのだろうか。
もぬけの殻の鎧が、グゥグゥ寝るとも思えないが。
ギャァ、ギャァ。
騒々しい声とともに、海鳥が上空を通過した。
トリ……、とり……、鳥!!!
鳥だ。鳥がいるという事は、陸地が近い!
勢いよく立ち上がり、水平線に目を凝らす。
あった!
幽霊船の舳先の向こうに、島影が見える。
やった。脱出のチャンスだ。希望が見えて来た気がする。
思わず声が出そうになるのを抑え込み、座りこんで小さなガッツポーズを作る。
だが、その希望は、直ぐに絶望へと塗り替えられた。
俺を乗せた幽霊船が、その島に向って進んでいることに気が付いたからだ。
船乗り達は、人買い船の航路近くに人ヶ島があると言っていた。
それに、幽霊船の目的はエジエルに換わり子を届けること。
そして、この船には換わり子が乗っている。俺は紛い物だが、もう一人は本物かもしれ
ない。ブジン達は、捕らえた換りの子を人ヶ島に運ぼうとするだろう。
こう考えていけば、幽霊船が向かっているあの島は、人ヶ島に違いない。
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