第二章 換りの子

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 さあ、困った。どうしよう。  ブジンどもは誤魔化せても、エジエルならば、俺が換りの子でないことは、直ぐ気付く だろう。エジエルにとって、換りの子は自分の命を繋ぐ大切な体だ。真贋を間違える筈が ない。それに、無理やり魂を移し替えようとすれば、俺が無事でいられる訳がない。  どうしよう。どうすれば良いんだ。  妙案が浮かばぬまま、時間が過ぎる。水鳥の数も増えてきた、  いよいよ、人ヶ島が目と鼻の先に近づいた。ブジンたちの動きも、心なしか慌ただしく なったようだ。  何とか逃げる術はないか、頭をフル回転させて考える。  と、そこである考えが閃いた。  幽霊船に乗って、このまま人ヶ島についたならば、換りの子の嘘が露見して、俺の命は 無い。ここで、幽霊船を逃げ出しても、泳ぎつけるのは人ヶ島だけ。だが、人ヶ島も全て ブジンの支配下とは限らない。もしかすると、ブジンたちに隠れて人ヶ島に隠れ住む事が 出来るかもしれない。  いや、何としても生き延びる。  そう考え至ると、俺は島の様子をつぶさに観察する。  人ヶ島は、目分量で差し渡し1ラウダ。俺の故郷の町がすっぽり入る程の大きさだ。  島全体が城壁で覆われている。  しかし、300年という時の流れに穿たれて、そこかしこに浸食の爪痕が見て取れる。  東側には、まだ三層の城らしきものが残っているが、西半分の城壁は崩れ去り、木々が 生い茂って密林の様になっている。あの密林の中に隠れれば、何とかなるかもしれない。  しかし、島の海岸線はどこも切り立った崖になっている。これでは、島に泳ぎ着いたと しても、上陸することは出来そうにない。悪くすれば、岩に衝突して海の藻屑だ。  船が人ヶ島に接近し、島の東側に向かって進む。  前方に天然の岬が見えて来た。その向こうに、三層構造の城が見える。  あそこが、この船の目的地なのだろう。  ふと見ると、岬の付け根付近に、潮の流れの影響だろうか、僅かばかりの砂浜がある。  あそこなら、泳いでいって上陸出来る。
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