第二章 換りの子

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 ダーッ。全力疾走で走る。  ところが、ずっと床に座っていたためなのか、二三歩進んだところで、足が縺れた。  ドッターン。ド派手な音を立てて床に転がる。  看守のブジン、甲板のブジン。幾体ものブジンが、俺を目掛けてやってくる。  体勢を立て直し、船端に向かったが、既にブジンが待ち構えている。  方向転換して、船首に向かう。  ロープや帆桁を掻いくぐり、手を伸ばして迫ってくるブジンを躱して前に進む。  ブジンが先回りして俺の行く手を遮る。  まずい。読みが甘かった。ブジンの動き自体は緩慢だけれど、連携が巧みで思うように 進めない。  ガス。  更に拙い事が起こった。何本目かのロープを避ける時、頭に巻いたチョッキが脱げ落ち た。夜光石の煌めきが失せた地の髪の毛が現れる。  その瞬間からブジンの動きが変わる。それまでは、手を伸ばして俺を捕えようしていた ブジンが、腰の剣を抜いて襲い掛かって来た。俺は捕獲の対象ではなくて、排除の対象に なったのだ。  ビューン。風を切る刃を寸でのところでよける。側にあった木の樽が粉みじんになる。
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