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着水までの一瞬が、永遠の時間のように感じられる。
水面へ、早く。と心の中で叫ぶ。
バッシャーン。
大きな衝撃とともに海中に飛び込む。その勢いで、海面から深く潜り込んだ。
潜水したまま泳いで距離を稼ぐ。顔を出した処をブジン達に狙い撃ちされない用心だ。
息の続く限り海面下で進み、一瞬、海上で息継ぎをして再び潜る。
これを繰り返して、船から距離を取る。
もう充分だろう頃合いで海面に顔を出して、船の方を振り返る。
投げ槍や飛び道具で攻撃されるかと案じていたが、それはなかった。
幽霊船は、俺の存在を忘れたように遠ざかっていく。
助かった。
俺は、人ヶ島の砂浜を目指して泳ぎ続けた。
*****
離岸流に幾度も押し戻されながら、何とか砂浜にたどり着いた。
くたくたの体を休ませたいところだが、砂浜で伸びている訳にはいかない。急いで身を
隠さねば……。砂浜の奥にある岩の影に身を隠し、漸くそこで一息つくことができた。
心が落ち着いて来ると、先ほどの幽霊船での光景が瞼の裏に蘇ってくる。
あの時、何が起こったんだろう。
ブジンどもの刃の前で俺の命が風前の灯火だった時、檻の中の子供の頭が光り、それと
同時に、ブジン達の動きが止まった。そのお陰で俺は助かった。
あれは何だったんだろう。
人買い船にいたクズレの話では、換りの子は、有り余るエルムで髪が光り輝いていると
いう。やはり、あの囚われの子は換りの子なのだろう。
だけど、どうしてあの瞬間に、光を放ち始めたのだろう。まるで、ブジンの注意を引き
付けるように……。
ひょっとして、換りの子は俺を助けようとしたのか?
会って確かめれば良いのだろうが、言葉が通じない上に、今はブジン達の虜だ。とても
会いになど行ける筈がない。
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