第三章 人外の城

3/11
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
 とにかく、今は自分が逃げ延びる事が一番だ。  そう、思い直して、頭の中から換りの子の影を追い払う。  まずは、この浜辺から離れなくてはならない。  ブジン達は、俺がこの浜辺に向かっていたのは見ている筈だ。きっと捜索の手が伸びて 来るに違いない。  砂浜は三方を断崖、一方を海に囲まれてる。その北の断崖に、道のように崖が削られて いる場所がある。  しめた。  その削れ目を足掛かりに、崖を登り始める。  登り始めて気づいたが、そこは正に道だったのだ。300年の歳月を経て、浸食されて いるが、嘗ては海岸への通り道だったに違いない。  道を登りきると城壁の根元についた。  城壁は島全体を取り囲むように建てられている。  城壁には階段がある。それを登って、城壁の上に出る。  そこは、島全体を一望できる場所だった。  城壁の内側には、町があった。幾層もの家並、縦横に走る道、市場と思しき広場。  だが、その全てが朽ち果て草生しており、人の姿は何処にも見えない。  300年前、ここは普通の人々が暮らす、平和な島だったんだ。  瞼の裏に、自分の故郷の風景が浮かび、胸が熱くなった。  いかん。感傷に浸っている暇はない。早く、身を隠さないと。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!