第1話 転校生

1/1
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

第1話 転校生

「んーとね。ちょっとおとなしい子なのかな」  女生徒が男子生徒に説明をする。 「ただ、ちょっと潔癖なのか、人に触られるのがあまり好きじゃないみたい」 「あ、会話は全然OKだよ」 校舎の案内をされながら話を聞いていた半袖の彼はつぶやいた。 「ふーん。難儀やなあ」  梅雨が終わったばかりの少し蒸した季節だった。 二人が図書室に行くと一人の男子生徒が窓際から外を見ている。 「明地くーん」  びくっと呼ばれた方を向き、 「あ、田代さん。・・・何」 色白で線の細い男子生徒が振り向く。 「明地君HR遅れてきたでしょ?  転入生が来たのよ。大阪から山岸君」 彼女から転入生の彼を紹介され席を立つ。 「あ、ごめんなさい。明地覚です」 「俺は、山岸慎。よろしゅうな」  笑顔で山岸が右手を差し出す。  思わず覚は身構えた。  「あ、堪忍。あまり触りたないねんな」 『思い切り閉じれば・・・』 「早く慣れるといいね」  笑顔で軽く山岸と握手を交わす。 「じゃ、まだ見学場所あるから、またね明地君」  クラス委員の田代が山岸を連れて行った。 『ふう。何とかやり過ごせた』  明地は胸をなでおろした。 『ふーん。ずいぶん色の白い子やなあ』 「えっ?」  慌てて図書室の出入り口を見る。 「今の彼の声?俺触っていないのに?」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!