04

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 本当は生徒会長なんてタイプでもなんでもない。きれいすぎる人間は距離を感じるから苦手だ。 それよりは、自分にすがりついてくるような、甘ったれで危なっかしいタイプが好きだった。 「……んだよそれ。この変態クソホモが!」 「別に入江のケツは狙ってないだろ」 「はあああ? バカにしてんじゃねえ」  わざわざ身の安全を保証してやったにも関わらず、入江は青筋を立てて激怒した。勢い任せに飛びつかれ、後ろの壁にゴチンと頭を打ち付ける。 痛みに顔をしかめていると、入江が体を密着させ、噛み付くようにキスを仕掛けてきた。  わけがわからず呆けている柊馬の唇に舌をねじ込ませ、内側へと侵入してくる。ぬるりとした感覚に肌が粟立った。 「ん……っ!? いり、んっ……」  抗議しようにも強引に舌を絡め取られ、呼吸すらままならない。 一体なんなんだこれは。 まさかの事態に少しばかり平静を欠く。それはそうだろう。今まで同志の一人も見つけられなかったおかげで、柊馬には経験がない。  ムードの欠片もないキスだけど、初めて触れた唇は柔らかく、絡み付く舌の熱さが劣情を煽る。キスの合間に漏れる入江の上ずった吐息も、下半身を熱くさせた。 「は……、なにが好みじゃない、だ。ちょっとくっついてキスしただけで、こんなガチガチにしてんじゃん」  それみたことかと口端を上げ、反応して膨らんだ部分に、入江が手を滑らせた。きゅっと布越しに握って、ゆるく上下に摩擦する。 「あはは、すげえ……ムクムクって硬くなった。好みだなんだ言って、所詮ホモだよな。ちょっと男に誘惑されただけでその気になってさ。なあ、わかったらさっきの俺に魅力がないみたいな暴言を今すぐ取り消せ」  唇を甘噛みしながら吐息混じりに囁かれると、腰が浮きそうになる。 その反面、冷静な頭で言葉の裏を読み取ってしまった柊馬は、入江の中に潜んだ見栄と、意地と、自信のなさを嗅ぎ取った。  ――本当に、かわいげのない、エゴまみれのガキだな。  入江の頭の中は面白いくらいに自分のことばかりで、クソホモと蔑んでいる相手にまで、存在価値を認めさせようと必死なのが滑稽だった。 彼を見ていると、どこに潜んでいたのかと思うほど、加虐心が刺激される。  面倒くさいだけの相手だと思っていたが、少し遊ばせてもらおうか、と悪魔の顔をしたもう一人の柊馬が笑った。 「取り消していいのか」  これで自分のペースに持ち込めたと得意になっていた入江だが、突然の真剣な空気に首を傾げる。 「せっかく、入江を嫌な気持ちにさせる前に諦めようって思ってたんだけどな……」  笑ってしまいそうなほど切なげな声音が口から飛び出し、思いのほか演技派な自分に驚く。こらえきれず腹筋が揺れ、その振動が密着した部分から入江に伝わった。 きっと、秘めた思いを告白する前の緊張だと、受け取られているに違いない。
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