はるのひ

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はるのひ

今日は4月15日。何の変哲もない日である。 例年通り、普通に平和に、過ごすはずだった。 「あ」 「あっ」 エンカウントは突然に。 今日は出会いたくなかったやつと出会った。 相手はいつものように露骨に嫌な顔をする。 「何だまた迷子なのか、箱入りのお嬢様?」 「いつも迷子になってるみたいに言うな暇人」 「暇じゃないわ!」 「なら私の行く先々に現れるな!」 そんなことを言われても、こちらだって知るものか。 「私だって会いたくて会ってんじゃないんだよ!」 「なら地下5階にでもに引きこもっていろ一人で!乗り換え大変だからどうにかしろ!!」 「一人じゃないやいお前みたいなシスコンと一緒にするな!歩けよいい運動だろ!」 「私だって一人じゃないぞ大馬鹿者!迷うんだ!」 シスコンは否定されなかった。自覚あったのか。 「ふん、私はお前のように不憫じゃないからな」 「誰が不憫だって!」 「高尾が話していたのを聞いたが叶わない恋をしてい」 「恋じゃないって言ってるだろ!叶わない言うな!やめろ!」 ごっそりとライフが持っていかれた気がした。 「とにかく私は多分不憫じゃないこの遅延魔!」 「相模原だって頑張っているんだそれ以上言ったら許さない!」 「相模原とは言っていないだろう自覚あったのか!」 「まあ関東私鉄1の乗降者数を誇るからな、混雑大変なんだ!」 「輸送力が低いんだろうケチ王が、そこに割くお金も出せないんだな!」 「押し込めばなんとかなる!力の限り押し込めば限界は越えられる!」 「おやおや、本日めでたく歳を重ねたご老人が無理を言う!」 「なっ⋯⋯お前とは13年しか違わないだろう!自分が老いていると思っているからそんな些細な差も気になるんだな!」 「まだまだ私は働き盛りだよ!お前と違ってまだまだ育つんでね!」 「お前が精神的に育って人並みの善意を身につけることを祈っているよ強奪魔!」 互いに息を切らす。 思えば、こんな風に言い合ったのは初めてかもしれない。 「覚えなくてもいい」 「あ?」 「お前が私の誕生日なんか覚えてなくていいんだ!」 ぴしゃりと言い放つと、くるりと振り返って足早に去っていく。 その言葉をどう受け取ればいいのか。あいつの言葉はねじ曲がりまくっているので、いちいち考察が必要になる。 「覚えていてくれてありがとうってことですよ」 「ああそうか⋯⋯って、相模原!?」 「姉様がすみません、ご存知の通り素直じゃないので」 高尾センサーが察知してやってくるかと思えば、珍しい顔。 そういえばと辺りを見回すと、やはりここは橋本だった。 「姉様の声がしたので、つられてきました」 「そう⋯⋯」 善性の塊。昔の私でさえも手を出そうと思えなかったほど、純真で誠実ないい子だ。 「私からも、姉様のお誕生日を覚えていただいていてありがとうございます」 「いや、礼を言われるほどじゃ」 「で、ですが姉様はまだお若いですからね!」 「え⋯⋯あ、はい」 若干強めに注意を受けた。心に刺さった。 謎の申し訳なさがざばんざばんと押し寄せてくる。これがパーフェクトシスターの能力か。
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