ネエネエ先輩が家に入った。

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 カーテン越しにも、外は灰色がかっているのが、分かります。ネエネエ先輩は、帰り支度をして、部屋を出ました。  わたしも一緒に、リビングへ行きます。  リビングには、揚げ物の甘いような、香りが漂っています。  母は、テーブルの上に、5皿のトンカツを並べている最中でした。 「よかったら、晩ご飯食べて行かない?」 「お気遣いありがとうございます。お気持ちは嬉しいんですが、もう暗くなってきたので、帰らないといけないんです。親が心配するので」  ネエネエ先輩は、テレビニュースで偉い人が、謝罪でもするかのようです。背筋をピンと伸ばして、母に頭を下げ続けていました。 「硬くならないで、明るい道を通って気をつけて帰ってね」 「お邪魔しました」  わたしの母がeスポーツ界で有名人と、知ってしまったからでしょうか。母に(こび)を売るかのような、ネエネエ先輩の態度は、“わたしって大人”をアピールする、ズルさかな?  わたしも負けじと意地になり、口調や仕草に、丁寧さを心がけます。 「先輩、わざわざ来てくれて楽しかったです。ありがとうございました。また月曜日、学校で会いましょう」 「私こそ楽しかったよ。うんうん、またねー」
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