81人が本棚に入れています
本棚に追加
/399ページ
カーテン越しにも、外は灰色がかっているのが、分かります。ネエネエ先輩は、帰り支度をして、部屋を出ました。
わたしも一緒に、リビングへ行きます。
リビングには、揚げ物の甘いような、香りが漂っています。
母は、テーブルの上に、5皿のトンカツを並べている最中でした。
「よかったら、晩ご飯食べて行かない?」
「お気遣いありがとうございます。お気持ちは嬉しいんですが、もう暗くなってきたので、帰らないといけないんです。親が心配するので」
ネエネエ先輩は、テレビニュースで偉い人が、謝罪でもするかのようです。背筋をピンと伸ばして、母に頭を下げ続けていました。
「硬くならないで、明るい道を通って気をつけて帰ってね」
「お邪魔しました」
わたしの母がeスポーツ界で有名人と、知ってしまったからでしょうか。母に媚を売るかのような、ネエネエ先輩の態度は、“わたしって大人”をアピールする、ズルさかな?
わたしも負けじと意地になり、口調や仕草に、丁寧さを心がけます。
「先輩、わざわざ来てくれて楽しかったです。ありがとうございました。また月曜日、学校で会いましょう」
「私こそ楽しかったよ。うんうん、またねー」
最初のコメントを投稿しよう!