ネエネエ先輩が家に入った。

3/3
81人が本棚に入れています
本棚に追加
/399ページ
 玄関で靴を履いて、母にまた一礼、わたしの扱いは軽く、軽くうなずき、笑顔で手を振っているだけです。母がサンダルを履いて降りるので、わたしも靴を履いて玄関を出ます。 「ここで結構ですから」 「高校に入った娘に初めて遊びに来てくれた、お友達だもの。これからも、仲良くして上げてね。車で送っていこうか?」 「いえ、まだ明るいので大丈夫です」  会ったばかりの人間に、余分な情報を与えなくて良いのに。話す母がドアを開いて、道へ出るネエネエ先輩を、笑顔で見送っています。路上に足を踏み出した、ネエネエ先輩。何度かぺこりと、母とわたしに、頭を下げてます。  わたしは、両手を胸の前で、軽く振っていました。  一歳年齢が違うという理由のみでは、頭を下げないという、わたしの決意を示せたのです。ネエネエ先輩が曲がり角で消え、聞こえないから、口にしました。 「マシンガンの子には、マシンガンの子のプライドがある!」 「……何言ってるの? しっかり挨拶(あいさつ)して、優しそうな良い先輩。ああいうお友だちを、大事にしなさい」  中学のときは、お友だちには公平に接しましょう、とか言ってたのに。不思議顔の母と、リビングに戻ります。トンカツ並ぶ、テーブルの上に、違和感があります。 「ん、お母さん、このトンカツの肉、この前、わたしがスーパーに買いに行かされたのだよね」 「うん! あの時は、ありがとう」  トンカツの肉は、この前、スーパーで広告の品で、売り出されたモノです。   春休みで暇をしていたわたしは、母の指示で“4枚”買いに走りました。わたしがラップに包んで、自宅の冷凍庫に保管したのです。  しかし、テーブルの上には、5枚のトンカツがあります。どうしてだろう?  わたしは、手を軽く鳴らします。母は4枚の肉を揚げてから、サクサクと切り分け、5つの皿へ奇麗(きれい)に並べたのです。  母のトリックを見破って満足です。足を開きながら、腰に両手を当てて、テーブルを見下ろします。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!