わたしは母がお刺身でも同じことをしたのを、思い出しました。

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 翌日の夕食は、やけに具が豪華(ごうか)なお味噌汁(みそしる)でした。  中学生だったわたしは、自室でのんびり、過ごしていたんです。それぞれ別の場所にいる、友だちたちと、スマホの通話アプリをしていました。  文字の雑談を楽しんでいたんです。ところが、リビングで料理をしている、母に呼び出されました。 「お味噌汁(みそしる)作ったの、味見(あじみ)してくれない」 「勉強中だったのに」 「ごめんね、味を見て欲しいの、変な味しない、酸っぱいとか、もし、変な感じがしたら、すぐ吐き出してね」  差し出されたのは、小皿に一口分だけ具が載せられ、汁はほんの少しです。口に含んで、下の上で転がします。違和感はありませんでした。 「味はおいしいし、酸っぱくないよ。うーん、少し具が硬い。煮過ぎかな」  具がうちの家では、贅沢(ぜいたく)な魚介類だったんです。ですが、やけに煮込んでありました。  部屋に戻って、スマホゲームで遊んでいる真っ最中にも、おかまいなしで何度か呼ばれました。  今思えば、前日残したお刺身の1パックを冷蔵庫で保存。そして、消費期限を1日過ぎているのに、熱通せば大丈夫、と翌日使ったのでしょう。  危険な行為でした。しかし、もう証拠は、家族全員のおなかに消えました。  プチ食品偽装事件でした。 ***
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