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「手紙を書くなんて珍しいね」
おじいちゃんが、空気を読まず、感嘆の声を上げます。うん、珍しい。年賀状もほとんど書かないです。くるっと振り返り、三人に告げます。
「先輩にお礼の手紙を今から書いて、今夜のうちに速達で投函するの。明日には先輩に手紙届くはず」
「スマホの通話アプリでは、いけないの?」
おじいちゃんが、首を傾げています。わたしはコクリと頷きました。
「ちゃんと手書きのハガキでお礼を伝えたいの」
父、母、祖父は互いの顔を見ています。父がへの字だった口を、動かします。
「もう高校1年だから、お前なりの考えがあるんだろう。手紙を書いてこい」
父、良いこと言う。わたしは、自分の部屋に戻り、学習机の前で、椅子に座ります。
ハガキを置きます。“喪中”見たことある、難しい漢字が書かれています。おじいちゃんの言いつけどおり、線で印刷された文字を消しました。
急いでペンを走らせました。最後に赤いペンで、ハガキの表面の上部に線を引きます。線の真ん中に、速達と書いておしまいです。
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