81人が本棚に入れています
本棚に追加
/399ページ
かしこ、草々、手紙のエンドは、どっちだっけ? 国語で習って、忘れちゃいました。
和風なデザインで、暗い色のハガキです。明るい色ペンで、一発書きです。
夜出かけるのは、危ない。郵便ポストがあるコンビニまで、自宅から徒歩2分です。おじいちゃんが車で、送ってくれました。
「おじいちゃんは、車で待ってるから、ポストに入れて来て」
「うん分かった。おじいちゃん、ありがとう!」
残念、運転席でおじいちゃんは、座ったままです。コンビニの、明るい光に照らされた駐車場。もし、おじいちゃんが、降りてくれば、店内に入ってました。お菓子の一つでも、買ってくれると思ったのに。
駐車場の隅に、ポツンと佇む赤いポストに、ハガキを入れます。わたしは、足早に、おじいちゃんの車に戻ります。
おじいちゃんは、家まで送ってくれました。そのままどこかへ、一人、車で走って行きました。
「ただいま」
《お帰りなさい》
両親の声がします。家に上がれば、父と母がテーブルを挟んで、スマホを覗き込んでいます。
「わたしも見て良い?」
母が手がひらを立て、隠しています。家計簿かネットバンキングでしょう。銀行ATMみたいに、横や後ろから見れないフィルム、貼ればいいのに。
「先輩にお礼のハガキ、速達で出しておいたよ」
「速達分の切手貼ったよね?」
速達って、追加料金分、切手を貼るんだ。忘れてました。わたしは、両腕を下ろして、固まってました。
「まさか、忘れたの?」
母が目を見開いています。わたしは、瞼がピクピクしますが、首を横に振ります。
「ちゃんと切手貼ったに決ってるでしょう。それより、お母さん、おじいちゃん、どこかへ車で行ちゃったよ?」
「多分、パチンコでしょう。ごめん、少しお父さんと二人だけにして」
「うん」
久しぶりにハガキをペンで書いたので、疲れてしまいました。シャワーを浴び、自分の部屋に戻れば、重い足取りで、ベッドにダイブしてしまいました。
(第一章 完)
最初のコメントを投稿しよう!