先生に質問するのは、生徒の権利です

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 審判が照明弾(しょうめいだん)を上空に発射します。ゲーム開始の合図です。スクリーンは新美(にいみ)先生からの視点に切り替わります。  マップは広々としています。北海道の観光パンフレットに、似合うあうような平原です。水平線まで見えるのに、撃ち合い用マップなので納屋などの建物が、景観を残念にしています。  隠れては撃つ。そして移動。またどこかへ隠れる。そして、近寄ってきた相手チームの選手を、バールを背後から無言で振り下ろす。  味方が撃たれているのを見れば、自分は物陰(ものかげ)に隠れて逃げる。狙撃銃(そげきじゅう)に装備変更して、敵を遠くから撃って倒す。  どうみても、自分一人が生き残る卑怯(ひきょう)な戦い方。本気モードで、正しい撃ち合いのプレイ方法です。ありがとうございました。 「先生、(うたが)うようなこと言って、すみませんでした」  立ち上がったわたしは、新美(にいみ)先生に、頭を下げ続けました。 「気にしないでください。レアアイテムのマシンガンのマスコットを持っているから、この程度は参考にならないかもって思ったんです。入部希望者に、プレイ動画を見せなかったのは、私のミスです」  先生のミスです、出そうになった言葉は、胸の辺りで止まりました。  心配なのは、ネエネエ先輩です。隣の席で青ざめた顔で口を少し開け、前を見ているだけです。二股(ふたまた)をかけるように、わたしと新美(にいみ)先生の興味を引こうとしたからでしょう。  あやしい魅力(みりょく)を出しきった状態でしょう。  チャームなエネルギーを使い果たし、気分でも悪いのでしょうか。
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