81人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしは帰路、昼休み、先輩に呼び出されたのを思い出しました
春の風が頬を撫でます。午後三時は、ぽかぽか陽気で気持ち良いです。
肩から下げたスクールバッグから、カチャカチャ耳障りな音がします。外れないよう鎖で繋いだ、マシンガンの、アクセサリーが揺れているからです。
FPSでは、左右から聞こえる僅かな足音や、呼吸音を聞き逃さないよう、注意を払います。
そのせいか、雑踏のなかで、少しの音でも聞き取れます。
アスファルトで舗装された広い道路の歩道を、スポーツシューズで歩を進めます。
隣を歩くネエネエ先輩は、モデルさんのような姿勢の良さです。わたしのお母さんが勤める、習い事教室にでも通っているかもです。eスポーツから、書道、学習塾、スポーツジム、タレント教室、作法などなど。多角経営の会社です。
「先輩、モデルさんみたいですね」
習い事でモデルさん教室通ってましたか、とは聞きません。習い事教室で、eスポーツの先生をしている、母の話の糸口にされるからです。
「えー、そんなことないよ。お世辞言っても何も出ないよ」
女子力高い発言です。今度わたしも使ってみたいです。でも、今日のネエネエ先輩は、不思議ちゃんでした。一つ目は、昼休み、一年のわたしの教室に訪ねて来たことです。
同じクラスのみんなが、楽しくお昼休みを満喫していたのです。
学食行った子は難を逃れました。しかし、気の毒なのは、教室の廊下に面した、扉近くにある、自分の席でお弁当を食べていた子です。その子は、『共トレ』の拳銃のマスコットを持っています。“コンバットオーナー”という名前の拳銃です。
コンバットオーナーの子が、お弁当食べていたら、廊下側に、ぽつんとネエネエ先輩が佇んでいたんです。
***
最初は一年の他のクラスの子だと、コンバットオーナーの子は、思っていたようです。しかし、上履きの色で、二年だと分かります。
箸を置いて、慌てて、口の中の食べ物を、飲み込んでいました。ネエネエ先輩に駆け寄ってました。
「ねえねえ本当にゴメン、食事中にゴメン」
最初のコメントを投稿しよう!