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喫茶店「ポラリス」の怠惰な日常
「あーあ、うちの店も異世界に転送されて、エルフのお姉ちゃんに囲まれながら大儲けできないかなぁ」
平日の昼間からごろごろしているのは、喫茶店「ポラリス」のマスターである。
「うちのレトルト料理だと、狂戦士に切り捨てられるのがオチでしょうね」
バイトくんはそんなマスターを尻目に、ベストに蝶ネクタイという喫茶店定番の制服姿で宿題に打ち込んでいた。
午後3時。ランチタイムとディナータイムの狭間にあたる、いわゆるアイドルタイムというやつだ。
もうしばらくすれば、コーヒーだけで2時間以上は粘る行き場のないおっさんや、人の悪口を主食とする御婦人方で少しは客入りも増える。
「ところでさ、バイトくん。うちの店、記念すべき3周年を前にいよいよヤバそうで」
「飲食店はオープン後3年で、そのほとんどが閉店するといいますもんね」
「バイトくん、しれっと受け入れないで」
「だいたいですね。『愛想は悪いが、飯は美味い』は名店になり得ますが、『愛想は良いが、飯はまずい』に名店はないでしょう」
「高校生にしてなんて正論だ。恐ろしい子」
バイトくんは問題集を閉じ、回転椅子でクルクルと回り続けるマスターに向き合った。
「とはいえ、最低賃金ながらも業務中に宿題をしていても許される職場を失うのは惜しい。何か打開策を考えましょう」
「僕としては、なんとかして異世界へ渡りたい」
「僕としては、店長の首から上だけを転移させたいですね」
「あはは! デュラハンだ!」
「店長、『首を切る』って言葉の意味は知ってますか」
「うっ……酔った」
「回らないのは首だけにしろ」
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