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都落つ
男の子みたいな姿に身を変えられた美保と、この世界で再会してから三日程が過ぎた頃………。
都での暮らしにようやく慣れてきたアタシは、宮廷の外れにある小部屋で、これまでに至る話を美保と一緒に語り合ってたんだけど………。
「………それにしても、那由は、学校でも色んな事に性懲りも無く、でしゃばりながら首を突っ込む事が多かったけど、今回ばかりは、本当に大役を引き受けたものよね。」
美保が、アタシにそう呟いてみせた。
「別に、アタシがなりたくてなってしまった訳じゃないもの。もし、誰かに代わって貰えるなら、代わって欲しいくらいなんだからぁ。」
でも、無理が通れば道理が引っ込む、なのよね。
これじゃあ、相田那由だった頃のアタシの方がマシだったかも………。
相田那由だった頃のアタシが懐かしい………。
別に、クラスの男子に、胸元を突っつかれたり、スカートを捲られたりされた方が良いなんて言ってる訳じゃ無いからね?………そこんとこ、勘違いしないでよね。
美保が、アタシに話した。
「………でも、この時代、男だからとか、女だからとかって、性別が違うと言うだけで、扱われ方が天と地ほどの違いがある訳なのよね?」
「………まあねぇ。」
「案外、私達って、今の自分を演じた方が良いのかも知れないわね。ひょっとしたら、そこに答えが隠されているのかも知れないし………。」
「今の自分って、何?」
「今のアナタは、相田那由じゃ無くて、言仁なんでしょ?………ワタシは公仲なのよ。お互い、今の自分を演じ続けていれば、何時かは、ワタシ達の世界に戻れると思うの。」
「………ひとつ聞いて良い?」
「………えぇ。」
「公仲って、どんな人物なの?」
「………それは、ワタシが直接、話をするよりも、アナタがこれから先、色んな事を経験しながら理解してくれる方が良いと思うけど。」
何だか答えになってるみたいで、なって無い気もするんだけれど………。
そして、公仲は妾に告げる。
「………明日からは、アナタは言仁。ワタシは公仲を演じるからね。人と人との約束よ?」
そして、その日の夜は、何事も無く明けるのだった。美保とアタシのお互いの未来の運命への不安を残したままで………。
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