その1

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その1

 どの銀河だか定かではありませんが、その昔、地球にそっくりで実際に神様が住んでいらっしゃる星がありました。  神様は各国にお一人ずつおられまして国内を自己所有のお車で巡回され、人々の日頃の行いや暮らしを毎日、調査されておりました。それは大雑把に言いますと、行いの良い人ほど良い暮らしをさせ、行いの悪い人ほど悪い暮らしをさせるためでした。  で、ニッポン国を担当される神様は振るっていらっしゃいまして随分と人目に付く大層派手なスポーツカーで巡回されていたのですが、或る晴れた日、ナラ村に訪れた神様は、巡回の息抜きをされようと土手道の路肩にマイスポーツカーをお停めになり、土手を降りられ川岸で釣りを楽しんでいらっしゃいました。  すると、偶々土手道を散歩していた百姓のケンキチが神様のスポーツカーを見つけて大変汚れているので日頃の御加護に感謝を込めて洗って差し上げようと思い、神様に気付かれないように土手を降りて行って被っていた麦わら帽子に水を汲んで土手を上がってはスポーツカーに水をかけるということを繰り返し、スポーツカーのボディ全体に水が行き渡ったところで首に巻き付けてあった手ぬぐいで丁寧に真心こめてボディを拭いて行き、スポーツカーをピカピカにして差し上げました。
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